かつて東電には、総務部経験者でなければトップになれない、という伝統がありました。総務部は総会屋担当の窓口にもなります。そして、東電は財界全体の総会屋担当という面がありました。ある意味で電力会社は、財界の”汚れ役”を引き受けていました。
また、原発開発を見ても、1基に4000億~5000億円かかると言われている巨大な事業です。大量の物資を調達し、発電施設を作り、電線を走らせる……いろいろな意味でビッグビジネスですから、やはり地域の・汚れ役・が必要になる。
だから、テレビや新聞がうわべの単純なストーリーだけを報じても、理解しにくい。しかし、追求すればするほど何層にも重なったタブーが出てくるので、全てを明らかにすることはできない、というのがこの問題なのです。
立憲民主党の枝野代表は、代表質問でこの問題を「原発マネー」とし、「あいちトリエンナーレへの補助金全額不交付」 「消費増税に合わせて導入されたキャッシュレス決済へのポイント還元策」を三点セットとして与党を追及すると言っていましたが、はたしてどこまで踏み込めるのか。
だいたい、野党は本当にやる気があるのか。野党合同で問題追及チームを作り、10月5日に大阪の関電本店を訪れましたが、5日は土曜日で会社は休みです。休みの日にアポもなく、突然訪問、担当者が不在なのは当然でしょう。結局、警備員に「国会審議に関電役員らの出席を求める要請文」を手渡したそうですが、例によってのバカげたパフォーマンスにしか見えません。
この問題を突っついていけば、自分たちに跳ね返ってくるのではないかと、恐れている節もあります。森山元助役が金をばらまいた先には与党のみならず、野党の議員がいる可能性は十二分にあります。
森山元助役が死んだいまとなっては、今回の問題が真に解明されることは難しいのかもしれません。
(初出:月刊『Hanada』2019年12月号)
著者略歴
経済ジャーナリスト。1961年、東京生まれ。日本大学経済学部卒。経済紙の記者を経て、フリー・ジャーナリストに。「夕刊フジ」『週刊ポスト』『週刊新』」などで執筆活動を続けるかたわら、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」、読売テレビ「そこまで言って委員会NP」、文化放送「須田慎一郎のこんなことだった!! 誰にもわかる経済学」他、テレビ、ラジオの報道番組等で活躍中。 また、平成19年から24年まで、内閣府、多重債務者対策本部有識者会議委員を務める。政界、官界、財界での豊富な人脈を基に、数々のスクープを連発している。