異常な部数を県議が指摘
当初、岡山や兵庫の県庁担当者に話を訊くと、いずれも「情報収集」のためという決まりきった答えが返ってきた。たしかに、さまざまな情報源を活用して物事を多角的に分析し、行政に活かすことは必要なことだ。しかし、「本当にこの部数が必要なのか」と首を傾げたくなるケースがいくつも出てきたため、全国調査に踏み切った。
今回の調査で明らかになったのは、世界日報が「しんぶん赤旗」の購読部数を問題視して報道した自治体のなかで、議員が委員会や本会議で取り上げるなどの行動を起こしたところでは、翌年度には購読部数の偏りが大幅に改善されていることだ。
最も顕著だったのが千葉県である。2017年度の「しんぶん赤旗」購読数(日刊・日曜版)は115部だったが、昨年度は120部に増え、全国最多となっていた。それが今年度は、日刊紙が38部、日曜版が16部の計54部にまでカットされた。すべての部局で削減され、年間で約202万円の経費削減となったのである。
きっかけは、県議会議員の質問だった。昨年7月25日付の世界日報報道のあと、中村実県議(自民)が10月の決算審査特別委員会で取り上げた。
中村県議は、購読理由に一定の理解を示しつつも、120部という数字の異常さを指摘。そして、これは県民の常識からかけ離れており、不偏不党の県庁が特定の政党の活動を公費で支援することは間違っている、と主張したのである。
同様の質問が岡山県でも行われた。同県は、2017年度には100部の共産党系機関紙を公費で購読していた。波多洋治県議(自民)が17年9月の定例議会で、「(機関紙の購読に)多額の公費を費やすことは許されない」などと主張。その結果、18年度の購読部数は20部にまで激減した。 埼玉県では、2017年度に購読していたすべての政党機関紙227部のうち99部を「しんぶん赤旗」日刊と日曜版が占めるなど、共産党系が極端に突出していた。中野英幸県議(自民)が17年12月の企画財政委員会で取り上げ、購入部数が偏っている状況を是正するよう求めた。県は見直しをする姿勢を示し、翌18年度には「赤旗」の購読部数は59部まで減った。40部が一挙に削減されたのである。
県土整備部だけで64部も購読
兵庫県の場合は大幅に減少した一方で、問題点も残った。世界日報は2017年2月17日付で、〈公費購入の政党機関紙 「しんぶん赤旗」が突出/兵庫県庁県土整備部、共産党系計64部〉の見出しで報道。県土整備部だけで64部(県共産党委員会発刊の機関紙を含む)も購読していることに焦点を当てた。すると、17年度には、県土整備部の赤旗購読数は一挙に4部にまで減少したことが分かった。
その理由について、同部の担当者は「他と比べて多かったため。報道があったことや県民から(見直しを求める)意見も賜ったため」と述べた。だが県議会でこのことが問題にされることはなく、減紙についても県土整備部が対応しただけで、依然として多数購読している他の部局にはほとんどメスが入っていない。
公費購読している政党機関紙のなかで「しんぶん赤旗」の占める割合が高い自治体でも、委員会や本会議で取り上げられていないところでは、購読部数の変化はあまり見られない。
昨年より4部増えている大阪は、24部と全体数は多くはないが、過半数が共産党系機関紙だ。同様にほとんど変化のない三重では25部中、20部が「赤旗」関係である。静岡は一部減少したが、依然として半数以上が共産党系機関紙である。
他に、愛知や東京でも共産党系が多い。「しんぶん赤旗」が73部で全国1位の和歌山では、「社会新報」が78部と共産系より多い。「公明新聞」も同数の78部で、「自由民主」が84部で一番多い。同県は「赤旗」に限らず、政党機関紙購読が異常に多いのである。
すべての政党機関紙が、たとえ多くても横並びであれば問題はないというわけにはいかないはずである。これらは、すべて県民の税金で支払われていることを忘れてはならない。地方財政が厳しいと言われるなかで、経費の無駄にメスを入れて是正しないのは、県および県議会の怠慢だ。適正部数なのかそうでないのか、検証のための議論を始めるべきだろう。