聞きたかった安倍の見解
本書が指摘する中国、ロシアへの対応への批判は、「2026年の今から見れば、あの時に妥協と取られる姿勢を見せるべきではなかった」と思わざるを得ないものではある。
だが、2012年から2020年までの第二次安倍政権期当時には、「中露にその片鱗はあったものの、まさかここまでの状況になろうとは、安倍といえども予測もつかなかった」とも言えるのかもしれない。
そして最も予測がつかなかったのは、アメリカが中露と同等かそれ以上の振る舞いを見せるようになったことであろう。最もトランプ大統領とうまく付き合った安倍が、現状を見たらどう思うのか、見解を聞くことができないのは残念でならない。
岸信介の孫として生まれ、岸が「反共」で連帯した統一教会がらみの事件で命を落としたという因縁それ自体が、安倍の人生をより劇的なものにしてしまったが、そうでなくても安倍の政治家人生は山あり谷ありであったことがよくわかる。
著者の服部氏が〈同時代の目撃者の責務〉として本書を書いたように、読者もいわば〈同時代の目撃者〉である。また、筆者にとっては、自分が構成を担当し、取材に居合わせた安倍へのインタビュー記事が参考文献に挙げられていることもあり、こうして自分のかかわった記事が、歴史の一部になっていくのだという実感、責任感も改めてわいてくる。
当時記事をお読みになった読者の方も、本書を読んで同じように感じられるのではないだろうか。
ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。

