フィナンシャル・タイムズが日本に鳴らした警鐘
英フィナンシャル・タイムズ(FT)は2026年4月10日、「トランプにNOと言えない国」と題した特集を掲載した。記事の核心は明快だ。米国を頼れなくなったときに、日本が「プランB」を持っていないこと——そして、そもそもプランBが存在しない可能性——を冷徹に突いている。
1989年に石原慎太郎・盛田昭夫の両氏が『「NO」と言える日本』を世に問うてから、四半世紀あまり。当時は「言える」かどうかが論点だった。だが今や、問いはより切実な形に変わっている。言える・言えない以前に、米国というカードが使えなくなったとき、日本には次の一手があるのか。FTはそこを抉(えぐ)った。
結論を先に書く。今回のイラン戦争は、日本にとって対岸の火事どころではない。これは日本の存立を直接揺さぶる危機である。本稿は、なぜそう言えるのかを順を追って示すものだ。
トランプ支持者だが一貫して反対だ
最初に立場を明らかにしておく。私は過去3年間で4回ワシントンD.C.に飛び、トランプのスピーチも生で聴いてきた、正真正銘のトランプ支持者である。そのうえで、今回のイラン攻撃には一貫して反対してきた。理由は、説明すれば高校生でもわかるほど単純だ。
イランはベネズエラとは根本的に違う。数週間の空爆でレジームチェンジ(体制転換)を成し遂げることなど、はじめから不可能だった。この点については、CIAを含む米インテリジェンス・コミュニティも、国務省も、ルビオ国務長官も、バンス副大統領も、軍制服組トップであるケイン統合参謀本部議長も、見立てを同じくしていた。攻撃を主導した政権の中枢でさえ、短期決着の幻想を共有していなかったのである。
戦争は必ず長期化する。ホルムズ海峡が封鎖され、世界的なエネルギー危機とインフレを招く。それは11月の中間選挙での惨敗に直結し、ほかならぬトランプ自身の足場を崩しかねない——。こうした帰結は、攻撃の前から完全に予想できたことだった。
そして現実は、ほぼその通りに進んだ。2026年2月28日、米国とイスラエルはイランへの一連の攻撃を開始し、最高指導者ハメネイ師が殺害された。イランは直ちにホルムズ海峡を封鎖し、米軍基地や周辺国への報復に踏み切った。4月8日にパキスタンの仲介で停戦が成立したものの、その後も米軍の空爆とイランの反撃は繰り返されている。世界の物流とエネルギーの大動脈は、いまも事実上閉ざされたままだ。
さらに見逃してならないのは、米政府自身が攻撃の動機を語ってしまったことだ。ルビオ国務長官は2026年3月2日、議会指導部への説明を終えた後の記者会見でこう述べた。
「イスラエルの行動があることはわかっていた。それがアメリカ軍への攻撃を引き起こすこともわかっていた。先制攻撃しなければ、より多くの犠牲を出すことがわかっていた」
要するに、イスラエルが単独で動けば報復はイランから米軍に向かう、だから先回りして米国も攻撃に加わった、というのが米政府による公式説明なのである。米国が構造的にイスラエルの戦争に引きずり込まれていることを、ほかならぬ国務長官が公の場で認めた告白に等しい。発言は米メディアで一斉に報じられ、MAGA陣営内部にも深い亀裂を生んだ。

