【読書亡羊】高市自民大勝、議席増は「推し活」のせいなのか?  加山竜司『「推し」という病』(文春新書)|梶原麻衣子

【読書亡羊】高市自民大勝、議席増は「推し活」のせいなのか? 加山竜司『「推し」という病』(文春新書)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


まずは「推しとは何か」から始めよう

「推し」という言葉が一般に知られるようになったのは第一章でもトップオタが登場するAKB48が、まさに国民的アイドルになる過程でのことだった。

そのAKB48が人気ランキングを「総選挙」となぞらえ、各候補が選挙ポスターを作成するなど選挙をパロディ化したのが2009年。人生を選挙に賭けて立候補する人がいて、それを応援したい、支持したいという人は確かに存在するため、これと思うアイドルを応援したいという「推し」に近い要素が選挙にも存在するのは確かだ。

だが、そこから15年以上が経つ間に「推し活」の実情は変わり、消費サイクルの巧妙さにしても、宗教性にしても、その色を増してきた。にもかかわらず、「病」とも言える執着を考慮することなく、いわば元ネタの本当の選挙の結果をあえて「推し活的である」となぞらえて分析して見せるのは、どうにも本末転倒のように思う。

実は筆者(梶原)は安倍政権が長期化した理由の一つとして、保守陣営の安倍支持が「推し活化」したと考えてきた。大きな挫折ののち、民主党政権を経て2012年末に再び総理として復活した安倍を、まさに人生を賭けて、公私の別を飛び越えてバックアップしてきた人たちがいた。しかもそこには悲壮感さえ漂っていた。

しかしそれはあくまでも安倍周辺の人々や言論人であって、相当数の有権者がこぞって「推し活」をしていたことを意味するものではない。

推し活は、ブームに乗って選挙の時だけ推せばいいなんて、そんなに甘い・軽いものではないのではないか。

ただし一方で、「推し」という言葉が一般化する過程で広く知られるようになり、給料の大半や人生を賭けるといった「重さ」が抜けたのではないかとも考えられる。単に「今はこの人に注目している」程度のことを「推し」と言っているのかもしれない。

「高市大勝は推し活選挙の結果」と結論付ける前に、そもそも「推し活」とはどのようなものを指すのか、その認識を一致させるところから議論を始めたい。本書はその一助になるはずだ。もちろん、推しに人生を賭けた人々の生きざまに触れることもできる。

梶原麻衣子 | Hanadaプラス

https://hanada-plus.jp/articles/712/

ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。

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