進化する自衛隊隊舎 千僧駐屯地に行ってみた!|小笠原理恵

進化する自衛隊隊舎 千僧駐屯地に行ってみた!|小笠原理恵

かつての自衛隊員の隊舎といえば、和式トイレに扇風機、プライバシーに配慮がない部屋配置といった「昭和スタイル」の名残が色濃く残っていた。だが今、そのイメージは大きく変わろうとしている。兵庫県伊丹市にある千僧駐屯地(せんぞちゅうとんち)を取材した。


居室の変化も見逃せない。3人部屋の隊舎にはパーテーションが設置され、一定のプライベート空間が保たれるようになった。備え付けのロッカー、ベッド下の引き出し収納、個人机といった設備は、隊員一人ひとりの生活を尊重する姿勢のあらわれだ。

下記写真の居室では、自分の本や私物をベッドサイドに並べ、趣味のグッズを飾る隊員の姿も垣間見える。これまでは、そうした個人空間の演出すら制限されることがあったが、今では一定の自由が与えられ、精神的にもくつろげる環境が整ってきた。

通常はあまり使用されなかった外来宿舎(予備自衛官訓練や他駐屯地からの来訪者用)の老朽化していたベッドマットについて、著者は問題提起したことがある。常勤自衛隊員の生活空間はそれほどではないまでも、一部の場所では古いベッドマットや毛布で我慢させられていた。

(撮影/筆者)

この問題が各地の自衛隊で一掃されたという話はSNSで見ていたが、ここで実際に確認することができた。ベッドマットや寝具は一新され、清潔なシーツや枕カバーも官給品で用意されている。その官給品もこれまではゆったり感のない寝具だったが、隊員の寝心地も考えられているのだろう。マットレスも以前とは違う分厚いものに交換されていた。

これまで「寝るだけの場所」だった空間に、“くつろぐ”という感覚が芽生えている。

さらに、電気ポットや冷蔵庫は官給品として設置され、電気代を隊員が負担する必要もなくなった。大型アイロン台の整備も、日々の生活の小さな不便を減らす一手だ。また、廊下に絨毯が敷き詰められていた。居室の絨毯の手前には「土足禁止」と書かれている。居室では靴を脱ぐことに配慮。これが隊員にとって喜ばれる大改善だと知った。その理由は後述する。

(撮影/筆者)

これらの変化は単なる設備更新ではない。防衛省の処遇改善政策の成果であり、隊員たちの生活を真剣に見つめ直した証でもある。

「自衛官の生活環境を整えることは、防衛力の基礎である」――この理念が、ようやく現実のものとなりつつある。

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