変わりつつある自衛官の処遇改善 千僧駐屯地に行ってみた!|小笠原理恵

変わりつつある自衛官の処遇改善 千僧駐屯地に行ってみた!|小笠原理恵

自衛隊員の職務の性質上、身体的・精神的なストレスは非常に大きい。こうしたなかで、しっかりと休息できる環境が整っていなければ、有事や災害時に本来の力を発揮することは難しい。今回は変わりつつある現場を取材した。


生活・勤務環境の改善に3878億円

2025年度、防衛予算は過去最大の8兆7005億円となった。このなかには、自衛官の処遇改善費167億円、生活・勤務環境の改善に3878億円、新たな生涯設計支援に19億円といった予算が盛り込まれている。政府は令和9年度までに自衛隊の人的基盤を強化する方針だが、生活・勤務環境の改善にも予算を投じているのがポイントだ。施設の改修もここに含まれている。

自衛官の募集難や中途退職の増加が課題となるなか、職場環境の改善、そして勤務している隊員が報われる処遇の実現は極めて重要である。

筆者はこれまで10年以上にわたり、「緊急参集任務を担う自衛隊員の官舎改善」を求める国会請願を、自衛官守る会の主催者として衆参両院に提出してきた。現職の中谷元防衛大臣もかつて何度も協力してくださった。2019年度発行の「自衛官守る会」会報には、次のような記述がある。

「防衛大綱にも、自民党の活動方針にも『自衛官の待遇改善』という文言が入りました。これは『自衛官守る会』からの要望を、自民党国防部会で取り上げたものです。防衛大綱への提言の中で、私たちが具体的に要望を上げておきました」

中谷防衛大臣ご自身も、この時にまとめた提言が形になっていく過程を喜んでおられることだろう。だからこそ、今回、改善された隊舎をこの目で見ることができたのは感慨深い。この改善に少しばかりの貢献ができたであろうことを誇りに思う。

自衛隊員の職務の性質上、身体的・精神的なストレスは非常に大きい。こうしたなかで、しっかりと休息できる環境が整っていなければ、有事や災害時に本来の力を発揮することは難しい。職場環境が改善されれば、「この職場で働いてよかったな」と感じることができるだろう。

駐屯地の「憩いと学び」の場

令和7年度の関連予算は、令和4年度と比べて約6.3倍に拡大している。たとえば兵庫県伊丹市にある千僧駐屯地(せんぞちゅうとんち)では、足場を組んで改修中の建物もあり、「まだすべてが終わったわけではありませんが、順番にキレイになっていきます」との説明があった。

入隊直後は原則として隊舎での集団生活が義務づけられているが、近年は規則も柔軟に見直されている。結婚して家族がいる隊員については、教育隊での前期3カ月・後期3カ月の約半年間の営内生活を終えれば、その後は家族と一緒に営外居住が可能になるという。このように、かつて入隊をためらわせていた「昭和の常識」を見直すことで、「自衛隊員になりたい」と思う人が増えてくれたらと願っている。

自衛隊員の任務は多岐にわたり、日々厳しい訓練や実務に当たっている。職務の性質上、身体的にも、精神的にも高いストレスがかかる職業だ。しっかりとした休息がとれる環境があることで、有事や災害時に万全に実力を発揮することができる。

取材に対応してくれた広報の皆さんは明るく迎えてくれた。訪ねたのは、隊員が身心のリフレッシュをはかるための施設、厚生センター。厚生センターは、単なる休憩所ではない。読書・運動・展示の3つの要素を兼ね備えた、まさに駐屯地の「憩いと学び」の場である。

館内にはFree Wi-Fiが完備され、図書室やコンビニスペースも併設されている。さらにWi-Fiが利用できる自習室等を令和7年度中に整備予定だ。隊員は駐屯地内で生活するため、勤務時間外でもゲームや動画を視聴することは、どこか気が引けるという声があった。

また、通信インフラが限られる地域に配属される人もいて、モバイル通信料の負担は若年層にとって大きな悩みだった。こうした環境が、若い世代にとって入隊をためらわせる一因となっていたことは間違いない。通信料を気にせず自由時間に楽しめる場所ができたことはプラス要因だ。

また、ワークボックス(電話ボックス)は普段はガラス張りで外から使用中だとわかる構造だが、内部でボタンを押せば曇りガラスになる。話をしているときの表情は人に見られたくないものだ。ここにも気遣いがあると感じた。このような施設整備は、今後も段階的に全国の駐屯地へと広がっていく予定である。

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