平均値が異様に低いのは、農家の大部分を占める零細兼業農家を統計に組み込んでいるがゆえの数字のマジックです。農業で生計を立てている主業農家(専業農家)の農業所得はそれなりのレベルの報酬を得ています。
別業で生計を立てている零細兼業農家は、票を得たい政治家や金を得たいJAの上客であり、政治家とJAが彼らを過剰に保護する構造こそ、日本の農業の大きな闇なのです。
日本のコメ農業は、大規模化の補助金と関税撤廃の補償金を得れば、十分に持続可能なビジネスです。それを持続不可能にしているのが、零細兼業農家を護る政治家とJAです。
三菱総合研究所・稲垣公雄氏:高齢になって続けられなくなるまでは、少なくない農家が、こういう農業(零細兼業農家)を続けてきたわけである。その理由はどこにあるのだろうか。ポイントは2つある。第1のポイントは、兼業農家であれば、農業の赤字をサラリーマン所得と損益通算(赤字の所得を他の黒字の所得から差し引くこと)することによって、ある程度はカバーできるということである。
第2のポイントは、消費者に直接販売することによって、実質的な赤字が減少するということである。(中略)。
以上をまとめると、統計上や確定申告上、農家の84%は赤字だが、自家消費用米の価値まで含めて考えれば、小規模農家まで含めたほぼほとんどの農家が所得ベースでは赤字ではないと考えられる、ということである。
また、元村氏・膳場氏・三輪氏は、コメは日本の主食であるから特別視することが必要であるかのように述べていますが、近年では、コメは日本の主食とはいえないような状況になっています。