「親父」ネタもある河野氏
六冊目は河野太郎氏の『日本を前に進める』(PHP新書、2021年8月)。
前回(2021年)の総裁選に合わせた本のようで、自身の来歴から、今後手掛けたい政策、ビジョンなどをパッケージした作りになっている。
父・河野洋平氏のことは終始「親父」と呼んでいるが、河野氏の本からは、洋平氏とは違って中国(や韓国)への過度な贖罪意識みたいなものは感じられない。
その「親父」が外相時代に、息子として河野氏が国会で核の傘に関する質問をぶつけたところ話が尽きず「家でやれ!」とヤジが飛んだというくだりは思わず笑った。
あと富士ゼロックス時代に「在宅勤務」をしている時に母親が「うちの息子は自宅待機でして……」と言ったというエピソードがあり、時代を感じさせて興味深かった。
洋平氏への生体肝移植のドナーとなった経験から、生体肝移植に関しても一章を割いている。関連する講演会で意見の合わない聴講者を〈会場から追い出した〉というのにはちょっと引いたが、巷間言われるように自分にも他人にも厳しい人なのだろう。
往生際が悪い? 石破氏
七冊目は石破茂議員の『保守政治家』(講談社、2024年8月)。
刊行時期からしても、当然ながら総裁選を意識した作り。何冊も自著を出しているが、今回は倉重篤郎氏が編集(構成?)した語り下ろし。
「総裁・総理になったら人物エピソードはここから拾い放題」という内容で、石破氏自身の生い立ちどころか、父親と田中角栄の関係から遡っている。
石破氏も角栄氏の薫陶を受けた一人だが、カネ集めや仲間づくりの面ではなく、「政治・選挙は握手した有権者の数だ」という教えの方が強烈に残ったらしいことがわかる。
よく指摘される「仲間と飲みにいかず本ばかり読んでいる」という点については、「お誘いを断ってまで読書を選んでいるわけではない」と反論。しかし読書や書店巡り、蔵書の詰まった書棚について語っている部分は他と比べても明らかにテンションが高い。
来歴を語る章の冒頭で「人生を振り返ってみろという倉重さんのご指示で、来し方を語ることとなりました。私のこれまでの人生になど皆さん関心はないでしょう、と言ったのですが…しぶしぶながらご指示に従いたいと思います」とあったのには少々、往生際の悪さを感じてしまう。