【読書亡羊】自民党総裁選候補者、全員の著作を読んでみた!

【読書亡羊】自民党総裁選候補者、全員の著作を読んでみた!

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


メディア嫌い・猪突猛進型の小泉氏

四冊目は小泉進次郎氏だが、あいにく本人の著作がないので田崎史郎氏がまとめた対談本『小泉進次郎と福田達夫』(文春新書、2017年11月)

対談している二人は小泉氏を農林部会長とする農政改革に奔走。その話が中心ではあるのだが、小泉氏・福田氏ともに世襲議員ということもあり、世襲の功罪について触れている。

面白いのは小泉家と福田家がかなり対照的だということ。小泉家は絆も深く熱量もあるが、福田家は醒めているとか。名コンビとして改革に奔走し、周囲の人は将来的な「小泉進次郎首相・福田達夫官房長官」タッグを期待したようだが(父親同士も「小泉純一郎総理・福田康夫官房長官」タッグを組んでいた)、今回福田氏はコバホーク支持。

本書を読むと、小泉氏のメディアに対する警戒心の高さに驚かされる。また、小泉氏は猪突猛進型のようで、後を追いかけながら論点を整理し、政策実現に持ち込む役を担った福田氏は苦労した模様。

「静岡のお茶から北極圏まで」の上川氏

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五冊目は上川陽子氏の『難問から、逃げない』(静岡新聞社、2020年12月)

自身がパーソナリティを務めるラジオ番組での発信を新聞記者がまとめたもの。安倍元総理が「腹が座っている」と評価したという「オウム真理教幹部の死刑執行」についても冒頭に綴られている。

静岡のお茶やイチゴの売り込みから北極圏までをライフワークとする幅広さと、リベラリズムに立脚する女性政策、犯罪被害者・受刑者支援などは際立っているが、これだけいろいろな関心をお持ちであるからこそ、防衛・安全保障面にはあまり言及がないのが少し残念。

第二次安倍政権以降、岸田政権まで外交と防衛は国家の両輪であることがいよいよ前提になってきており、2プラス2などで外務大臣と防衛大臣が同席することも増えてきている。次の本ではぜひこのあたりも書いてほしいところ。

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書評 読書亡羊 梶原麻衣子

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