【読書亡羊】自民党総裁選候補者、全員の著作を読んでみた!

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


筆致が冴える茂木氏

八冊目は茂木敏充議員の『日本外交の構想力』(徳間書店、2003年8月)

実に21年前の本で古本も高騰していたため、唯一図書館で借りだしての読書。だが、読んでびっくり書きっぷりや構成の妙に驚かされた。さすが元読売新聞記者というべきか。

外務副大臣として向き合った課題、取り組んだことを描写しつつ、今後の展望を描きだす筆致がとにかく上手い。あまり思想的な発言や発信をされていない茂木氏だが、アメリカとの関係について「時に自制を促せるような日本でなければならない」というスタンスが明確。

また、日本にとっての喫緊の課題は2003年当時、北朝鮮対応であり、中国はむしろ「北朝鮮を牽制できる立場」として、日本の明確な脅威にはなっていなかったことも分かる。時代の流れを感じざるを得ないが、この当時の記録としても重要。

それにしても、なぜもっと頻繁に本を出さないのか。


……さて、8冊を読み比べてみたが、「本は体を表す」とはよく言ったもの。動画全盛の時代だが、議員の皆さん、自らの政治思想や来歴、政策を世に訴えるために、ぜひどんどん本を出してほしい。

『岸田文雄回顧録』の刊行もお待ちしております。

梶原麻衣子 | Hanadaプラス

https://hanada-plus.jp/articles/712/

ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。

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