今やバイデン政権率いるアメリカのリーダーシップの下、世界秩序は乱れている。しかし、それ故、特にハマスによる奇襲攻撃以降、トランプの存在感も再び強まっている。なぜなら、トランプ政権の外交が世界に安定をもたらしていたとして再評価が始まっているからだ。
例えば、トランプが2017年に中国の習近平国家主席と初めて会談し、フロリダ州パームビーチにある「マー・アー・ラゴ」で食事をした時のことを思い出して欲しい。トランプの言うところの「美しいチョコレートケーキ」をデザートとして楽しみながら、彼は米軍が59発のトマホーク巡航ミサイルを撃ち、シリアの軍用飛行場を爆撃したことを習近平に伝えた。これはシリアのアサド大統領が23人の子供を含む77人の自国民を毒殺したことに対する罰であり、また習近平がこれらの殺人に対する国連の非難を阻止したことに対する罰でもあった。
当時、北朝鮮や中国、イラン、イスラム国など多くの外交上の問題に直面していたトランプ政権のこの比較的素早い対応は、友好国や敵対国に対し、必要なら武力行使をいとわない決意を見せる意図があったとされる。これについて安倍晋三首相(当時)も、「化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないとの米国政府の決意を日本政府は支持する」と記者団に語っている。「強いアメリカ」のあり方の意義を感じる一件であるが、この件についての評価を含めた「世界はドナルド・トランプ政権下でより安全だった」と題されたオピニオン記事が、10月20日付けで『The Hill』というアメリカの政治専門誌のネット版に掲載されている。
記事内では、トランプ前政権とバイデン現政権の比較と共に、CNBCの新しい世論調査でバイデンの外交政策への対応を支持する回答者がわずか31%であることや、ジョージ・W・ブッシュとオバマの両ホワイトハウスで働いたロバート・ゲーツ元国防長官が米国の新興メディア『アクシオス』の取材に対し、米国は「78年前に第二次世界大戦が終わって以来、最も多くの危機に直面している」と語ったことが紹介されている。
ゲーツはバイデンが「過去40年間、ほぼすべての主要な外交政策と国家安全保障問題で間違っていた 」と断言している人物である。バイデン政権の外交がいかに国際秩序を乱しており、危険であるかが指摘されているのだ。
「私が大統領であれば、イスラエル攻撃はなかった」
トランプの先見性も再評価されている。様々な例があるが、一番話題なのは、世界同時多発テロ記念日である9月11日、つまりハマスによる奇襲攻撃の約一ヶ月前にトランプが自身のSNSアプリ「Truth Social」においてその奇襲を予言していたことだ。それにはこう綴られている。