日本は世界で最も重要な国のひとつ|オレグ・マガレツキー×石井英俊

日本は世界で最も重要な国のひとつ|オレグ・マガレツキー×石井英俊

ロシア政府によって「望ましくない団体」に指定された「ロシア後の自由な民族フォーラム」の創設者・オレグ・マガレツキー氏に緊急インタビュー。ウクライナ戦争の行方、世界は、そして日本は今何をすべきなのか。


日本に期待すること

石井 日本で開催するにあたって、日本に期待することは何ですか?

マガレツキー 私たちは、官民双方の代表者、NGO、専門家、メディア、民間企業の人々が、アジア地域の将来の新しい国家の指導者たちと直接つながるようになることを願っています。東アジアにおいて新しく独立しようとしている民主主義国家(太平洋連邦、シベリア連合、サハ、ブリヤート、カムチャッカとチュコトカ共和国、トゥバなど)は、日本、アメリカ、台湾、韓国の地政学的、貿易的、軍事的同盟国になるでしょう。ですから私たちは、東アジアの未来の民主主義国家の独立運動を代表する人々の架け橋になりたいと願っています。

石井 以前も私はあなたに伝えましたが、日本にとっては中国が最大の問題です。その意味において、ウクライナのブダノフ情報総局長が描いたというロシアの分裂地図は、私たち日本人にとっては受け入れることはできないものです。ブダノフ情報総局長は誕生日ケーキにその地図を描いてナイフを立てていました。ロシアが分裂するだろうというメッセージが主要な論点であることは理解しています。しかし、問題はその地図です。ロシアは3つに分裂し、西側の3分の1がロシア、真ん中が“中央アジア共和国”、そして東側の3分の1が中国になっていました。これは大変な問題だと言わざるを得ません。ロシアの弱体化が、中国の強大化につながることは、日本人として決して容認できません。私は、ウクライナを応援します。ロシアの脱植民地化も応援します。ただし条件がひとつあります。それは中国には決して手を貸さない、ということです。中国共産党と手を組めば、日本の友人には決してなれないということは、明確に指摘しておかなければなりません。

マガレツキー はい、あなたの言われていることはよくわかります。ブダノフ情報総局長のあのケーキには、悪気はなかったと思いますが、もちろんあれはよくありません。彼と話す機会があるときには、その考えを変えるようにきちんと話をしたいと思います。

ロシアだけではなく、中国の領土も脱植民地化するべきです。自由なチベット、自由な東トルキスタン、自由な満州、その他の新しい国家がポスト中華人民共和国になるべきだと思います。私たちは、ポスト・ロシア空間についてだけ語っているのではありません。ロシアが崩壊した場合には、北京の体制を変える機会が高まるということを見据えるべきです。ロシアが崩壊すれば、北京の政権交代のチャンスが到来します。だから私たちは、モスクワと北京がそうであるように、捕われた国、植民地化された国、占領された国との間につながりを築くべきなのです。

ブリヤートとサハ(筆者注:両方ともモンゴル国の北方に位置するロシアの“共和国”)の運動は反中国です。彼らは北京の一部にはなりたくないし、自由な世界の一部になるために領土や経済システムを手に入れたいのです。彼らは日本、アメリカ、韓国、台湾とつながりを持ちたがっています。だから今、橋を架けることが非常に重要なのです。

自由主義の国々がロシアの脱植民地化を支援することは、モスクワー北京ー平壌ーテヘランという専制国家と、その衛星国の政権(アサド、マドゥロ、タリバン、ルカシェンコなど)による枢軸への、抑止力となるのです。

石井 あなたは今キーウに住んでいて、身の危険を感じますか?

インタビューの様子

マガレツキー もちろん戦争中ですので、その意味では毎日危険は感じています。ただもう500日にもなっていて、そこからは離れるべきです。ずっと怖がっているわけにはいきません。例えば今日もリヴィウで空爆があり、多くの人が亡くなりました。2、3週間前はキーウで空爆がありました。でも、私たちは生きるべきです。戦うべきです。愛するべきです。落ち込んでいたら戦えません。だから、戦う力を持つためには、精神的にも肉体的にもかなり良い状態であるべきです。私たちのためにすでに殺されてしまった人々のために、これから生まれてくる人々のために、私たちは戦うべきです。

石井 個人的に危険を感じることはありますか?例えば暗殺の対象になっているなど。

マガレツキー マイダン革命からもう10年が経ちました。もちろん私たちの命はひとつであり、ロケット弾や銃撃で殺されるかもしれない可能性は毎日あります。しかし私はウクライナ人として、私たちの勝利をより早くするために何をすべきかということに集中しています。私はこの仕事をすることに決めました。もちろん、私だけではなく、私の家族にとっても非常に危険なことですが……。ロシアのテロリストは、対象者だけでなく、その家族までも殺すのですから。私は嘘をつくのが得意ではありません。この戦争が始まる前の2014年からすでに、私は死ぬかもしれないと理解していました。オープンな社会と活発な経済という成功を私は築きたかったのです。外国に行って暮らしたくはありませんでした。だから、何百万人ものウクライナ人と同じように私も戦わなければなりません。
(2023年7月6日/通訳・翻訳:石井陽子《ランダムヨーコ》)

石井英俊

https://hanada-plus.jp/articles/1233

自由インド太平洋連盟副会長。1976年、福岡市生まれ。九州大学経済学部卒業。経済団体職員などを経て現職。アジアの民族問題を中心に、国内外にネットワークを持つ国際人権活動家。

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