日本は世界で最も重要な国のひとつ|オレグ・マガレツキー×石井英俊

日本は世界で最も重要な国のひとつ|オレグ・マガレツキー×石井英俊

ロシア政府によって「望ましくない団体」に指定された「ロシア後の自由な民族フォーラム」の創設者・オレグ・マガレツキー氏に緊急インタビュー。ウクライナ戦争の行方、世界は、そして日本は今何をすべきなのか。


ロシアが41に分裂した地図。北方領土だけではなく、南樺太と千島列島も日本領となっているところが興味深い。(「ロシア後の自由な民族フォーラム」のホームページより)

石井 最初にあなたのプロフィールを簡単に教えてください。あなたはキーウに住んでいるウクライナ人で、「ロシア後の自由な民族フォーラム」の創設者ですよね。どのような経験、政治的な活動をしてきたか、そしてどのような経緯でこのフォーラムを創設することになったのでしょうか。

マガレツキー 私は大学では組織の管理、グローバル・マネージメント、つまりビジネスだけでなく、公共サービスなど様々な組織を管理する方法を学びました。組織をどう発展させるか、どう大きくするかについて学びました。だから、私の職業は戦略的開発のようなもので、戦争がない普段の生活では、コンサルタントのような仕事をしていました。

戦争が始まると、私はどうすれば戦争を止められるか、どうすれば当面の平和だけでなく、ヨーロッパ、東アジア、アジア太平洋地域における協調的な戦略構築の機会を獲得できるような真の勝利を手に入れられるかを考えました。そして、そのことを考え始めたときに、このプラットフォームのアイデアが浮かんだのです。

石井 このフォーラムの創設前にも政治的な活動に参加されたことはありましたか?

マガレツキー ええ、もちろんです。私はウクライナ人であり、祖国を愛する市民です。2004年から2005年にかけてのオレンジ革命に参加しました。学校からマイダン(筆者注:キーウの独立広場)へ行き、革命に参加しました。両親は心配していました。2回目は2013年から2014年にかけてのユーロ・マイダン革命です。以前から始めていた多くの活動を、銃乱射事件などがあった最後のときまで続けました。

そして2014年にロシアとの戦争に参加しました。兵士のように前線に行き、ロシア兵による銃撃を受けました。だから前線から帰ってきたときは、ビジネスのための生活ではなくなりました。私は政治を変えようと思いました。なぜかというと、国をより良くするために努力すべきだからです。私は、コンサルティングのように、マーケティング・コミュニケーションを理解している人が好きです。様々な政党、リベラルな政党を応援しました。私はリベラルなマインドを持っています。だから、ボランティアとして応援しました。お金のためではありません。

石井 このフォーラムを作ろうというアイディアはどのようなところから生まれたのですか?

マガレツキー “いわゆるロシア連邦”(筆者注:ソビエト連邦の時代とは違い、ロシア連邦においてはロシア連邦を構成する共和国に、連邦から独立する自由は憲法で認められていない。そのため、真の意味では「連邦制」ではないという主張)の内部におけるフラストレーションは非常に高まっています。「捕われた国々」や植民地のように扱われている地域の問題を私は理解していました。そして、私はこれらの支配に反対です。

しかし、実はロシアの反体制派や野党のように見える人たちも、ロシア連邦保安庁(FSB)やその他のロシアの特殊部隊にコントロールされていることがあります。彼らは自分たちの体制やシステムを本当に変えたいのではなく、いわゆるロシア大統領という肩書きの名前を変えたいだけであったりします。彼らは現在の体制を守りたがっています。そして、彼らは様々な民族を自由にすることを望んではいません。

だから私は、FSBのような背景や資金やプロパガンダのない、新しいプラットフォームを構築する必要があると考えました。捕われた国々や地域の運動を代表する様々な人々と話をし、そのように考えるEUやアメリカ、イギリスの人々と連絡を取り合い、2022年の春にこのプラットフォームを構築してスタートしました。

日本はアジアで最も強力な自由民主主義国家

EU議会を会場とした第4回フォーラムの様子(「ロシア後の自由な民族フォーラム」のホームページより)
     

石井 これまで既に6回のフォーラムを行っていますね。

マガレツキー はい。最初はポーランドのワルシャワで、2022年の5月8日(ヨーロッパの戦勝記念日)に開催しました。2回目はプラハ(チェコ共和国)。3回目はバルト海のグダニスクです。グダニスクもポーランドですが、非常に興味深い場所です。グダニスクはドイツ語での都市名はダンツィヒで、第二次世界大戦が始まった都市です。第3回目のフォーラムでは、バルト海とスカンジナビア地域のポスト・ロシアについて話しました。

そして4回目のフォーラムは、スウェーデンのヘルシンボリで行いました。ポスト・ロシアの独立国家の国境をどうするか、人、モノ、通貨についてどうあるべきか、どう変えるべきか、何か共通のものを持つべきかについて話しているので、これも興味深かったです。

5回目は今年の1月31日でした。ベルギーのブリュッセルにある欧州議会の建物で行われました。あれは最高だったと思います。

そして、日本の前の最後の開催地はアメリカで、ワシントンDC、フィラデルフィア、ニューヨークというアメリカの3つの都市で行われました。20-40の独立国家を作りたいという意見や、統一ロシア(United Russia)のような改革的なものが必要だという意見もあり、討論も行われました。とても素晴らしいものでした。

次回は8月1日と2日に日本で開催されます。そして年末に向けて、さらに3つのフォーラムを開催します。9月にロンドンとパリで。10月の終わりには、イスラエル、トルコ、そしておそらくアラブ首長国連邦かカタールで開催する予定です。どうするのがいいか、今議論しているところです。そして今年最後のフォーラムは、12月にベルリンとウィーンで開催されます。

石井 日本で開催しようと思った理由は何ですか?

マガレツキー 日本は世界で最も重要な国のひとつです。なぜなら日本はアジア、東アジアで最も強力な自由民主主義国家だからです。ロシアが分裂し新しい国家が誕生するというプロセスでは、中華人民共和国は自分たちのために国家を作ろうとするだろうと私たちは考えています。そしてそれは自由世界にとって悪い影響があることだと理解しています。

また、ロシアは日本の領土である樺太や北方領土を占領しています。このロシア空間の脱植民地化と再構築のプロセスが、日本にとっても、東アジア全体にとっても、どのようにウィンウィンのケースになり得るか、そのように考えることは大変重要だと思っています。

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