理解増進の法律案はまだ作成する段階ではない
自民党の会議においては、「理解増進法」についても議論されていると述べたが、そのベースは、令和3(2021)年5月の与野党超党派議員連盟による法律案からの修正となっていた。私はこれはおかしいと主張している。それは、この法律案は当時、自民党内において議論が紛糾し、何ら党内決定されていないものだからである。
私は、理解増進の法律案はまだ作成する段階ではなく、法律の必要性も含め徹底議論すべきであると主張しており、あくまで議論のベースは、自民党内で合意を得ている考え方を基にすべきである。それは平成28(2016)年5月に党がまとめた「性的指向・性自認の多様なあり方を受容する社会を目指すためのわが党の基本的な考え方」だ。
この中で、目指すべき方向性として、「カムアウトできる社会ではなくカムアウトする必要のない、互いに自然に受け入れられる社会の実現を図ることであり、性的指向・性自認の多様なあり方をお互いに受け止め合う社会を目指す理念を定めた上で、現行の法制度を尊重しつつ、網羅的に理解増進を目的とした諸施策を講ずることが必要であるとの方向で意見の一致を見た」としている。
この内容から言えることは、自民党の考え方として合意しているのは、決して新たな法律の制定ありきではないことである。憲法第14条1項には、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と記されている。
まずこの憲法14条1項をもとに、どのようにLGBTの方々への理解増進を図るかを考えていくことが私は重要であると考える。現行の法制度を尊重し、自身がLGBTであると「カムアウト」しなくても理解される社会の実現を、自民党として合意し目指すべきものとしているからである。
拙速に議論を打ち切り、法案提出するということはあってはならない。LGBTの方々をはじめ全ての人への不当な差別があってはならないというのは日本社会で当たり前のことであり、逆に新しい法律案を作ることで「女性の人権を更に後退させる恐れがある」との指摘にしっかりと向き合わなくてはならない。
理解増進のあり方について、徹底的な議論を継続すべきである。