LGBT法案、女性を守るためにも徹底的に議論を!|和田政宗

LGBT法案、女性を守るためにも徹底的に議論を!|和田政宗

「G7の中で日本だけ、LGBTの方々に対する差別禁止の法律がない」との主張を展開する方がいたが、衆院法制局によって「(G7の)いずれの国にも、性的指向・性自認に特化して差別禁止を定める法律はない」ということが明らかになった――。(サムネイルはエマニュエル駐日米国大使Twitterより)


「G7の中で日本だけ」は事実として誤り

自民党内でLGBTの方々への理解増進のあり方について議論する「内閣第一部会・性的マイノリティに関する特命委員会合同会議」が継続して開かれている。合同会議の中では、「理解増進法」の議論も行われているが、私は、「G7までに」など期限を区切ることはせず徹底的に議論すべきであると、この会議で提起している。

徹底的な議論が必要な理由として、状況の変化が2つある。

ひとつは、これまで法制定推進派の中に、「G7の中で日本だけ、LGBTの方々に対する差別禁止の法律がない」との主張を展開する方がいた。私はG7各国において、「人権法」などの法律で、差別禁止の定めがある国があることは認識していたが、今回の党における議論の中で、「(G7の)いずれの国にも、性的指向・性自認に特化して差別禁止を定める法律はない」ということが明らかになった。

これは、衆院法制局がG7各国の法律を調査した上で合同会議に提出したことで判明した。さらに、唯一カナダにおいては、「人権法」で差別禁止事由として「性自認」が明文化されているが、その他の国では明文化されていないことが判明。日本がG7各国の中で特に法整備が遅れているというのは、事実として誤りなのである。

LGBTの方々への理解増進について法整備をするのかどうかについては、欧米各国と日本の文化や宗教的観点の違いを認識しなくてはならないと考える。現在もカトリック教会においては、教義として同性愛は「逸脱した行為」とされている。

一方、日本においては戦国時代の武将と小姓の男色関係など、こうしたことに大らかな文化であった。宗教上の理由で同性愛などが禁止されてきた国と日本では全く違う。このような宗教的、文化的観点からも日本においてLGBTの方々の理解増進のために何をどこまでするのかということを考えなくてはならない。

当事者団体が「LGBT法案への懸念」を表明

状況の変化のもうひとつは、慎重派の当事者団体が声を上げ始めたことである。「女性スペースを守る会」は、LGBTの方々などからなる団体であるが、5月1日に日本記者クラブで記者会見を開いた。会をサポートしているのは人権派の弁護士である。

この会は、目的として「女性スペースを守りたい」と掲げ、「LGBT法案への懸念」として、「LGBT法案のうちの『T=性自認による差別は許されない』という文言が身体の性別よりも性自認を優先させることに繋がり、身体の性別によって社会的な不利を被ってきた女性の人権を更に後退させる恐れがあると、私たちは考えています」と表明している。

自民党は、LGBTの方々への理解増進のあり方を考える上で、まだこの団体からはヒアリングをしていない。私は、こうした慎重派の当事者団体からもヒアリングする必要があると考えており、党内でも提起している。

この団体が述べるように、心も身体も男性なのに「心は女性」と称して、女性更衣室や女性トイレ、女性用浴場に入る人物が出て来るのではという懸念について、こうした人物からどのように女性を守っていくのかという観点での議論は深まっていない。

LGBTの方々はこうしたことはしないと考えるが、悪意を持った「身体は男性だけど心は女性」と主張する人物を止めることができるのか、どのように止めるのかを、女性を守るためにも徹底的に議論する必要がある。

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