米上下両院合同会議演説が転機
リベラルの牙城であるBGFが安倍元首相を高く評価することに疑問を感じる方がおられるかもしれない。転機は同年5月、訪米した安倍元首相が日本の首相として初めて米上下両院合同会議で行った演説にある。日本の民主主義を強調し、対米協調路線を明示して、先の大戦についても謝罪一辺倒の姿勢を見せることをやめた。戦死した米兵に哀悼の意を表した上で、敵国から同盟国となった日米の「心の紐帯」を訴え、米議員は総立ちで拍手を送った。「希望の同盟」を提唱すると、それまで安倍元首相のことを「歴史修正主義者」「右翼ナショナリスト」とレッテルを張っていた米有力紙は絶賛した。
当初、安倍元首相の世界観、安全保障観に共鳴したのは、保守の共和党だった。オバマ政権が中国との関係を深める関与的な協調路線を採ったため、民主党には「親中派」の議員が多かった。ただ「親中」の民主党重鎮たちも、一方的な現状変更を試みる中国の覇権志向に眉を顰め、安倍元首相の「希望の同盟」に共感を抱くようになった。
かくして、共和党のみならず民主党も安倍元首相を民主主義、日米同盟という共通項で共存していくよきパートナーとして快く丁重に迎えたのだった。