国民栄誉賞受賞ジャーナリストの不当逮捕に習近平の影|石井英俊

国民栄誉賞受賞ジャーナリストの不当逮捕に習近平の影|石井英俊

いま民主主義国であったはずのモンゴル国が、独裁国家中国によってその色を塗り替えられようとしている。そのような中、高市早苗大臣が会長を務める「南モンゴルを支援する国会議員連盟」が世界を動かした!


無実のまま懲役10年の判決

ムンヘバヤルは、モンゴル国において著名なジャーナリストであるとともに、南モンゴルの運動に携わっている人々にとっては欠かせない同志だ。2月17日の逮捕直後、世界各地の南モンゴルの運動団体が逮捕を非難する声明を出した。

検察側が主張する犯罪容疑が証拠の一切ない、いかにでたらめな一方的主張に過ぎないかは長くなるのでここでは詳述しないが、関心がある方は「Southern Mongolian Human Rights Information Center(南モンゴル人権情報センター)」のホームページを是非ご覧いただきたい。

南モンゴル人権情報センターはニューヨークに本部を置く人権団体で、2001年の設立以来アメリカ連邦議会でも数多くの証言を行ってきている南モンゴル運動の中心的な団体だ。ムンヘバヤルが6月に拘置所の中で記した手書きの手紙が、家族の手を経てこの南モンゴル人権情報センターに届けられ、原文のモンゴル語が英語に翻訳されて全文がホームページ上で公開されている。手書きの手紙の原本も、画像が公開されている。

この手紙において、検察の主張がいかに根拠のないものであるか、その一つ一つに対して丁寧に反論し、ムンヘバヤルは自身が全くの無罪であることを主張している。実際、犯罪の証拠は何一つ示されてはいない。

そのことは、モンゴルの裁判所でも一時期認められていた。4月1日、ウランバートル市の裁判所で開かれた第一審において、裁判所は「犯罪を示す証拠が不十分である」として事件を検察に差し戻しているのだ。本来であればこれで無罪となり、この件は終了していたはずである。

ところが、同じ裁判所において、新たな「証拠」も加えられないままに再度審議が開かれ、6月28日に一変して懲役10年の判決が下されたのだ。さらに、9月21日の第二審においても、第一審と同じく懲役10年の判決が下った。

世界中で日本にしか存在しない議員連盟

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ムンヘバヤルを救出するため筆者が具体的に動き出したのは、この6月の第一審判決が下された直後からだった。それまで南モンゴル団体や支援する日本人が動いているとばかり思っていたのだが、南モンゴルを支援する運動全体がこの問題についてはほとんど動いていなかったことを知る。

2月の逮捕直後に、日本の南モンゴル運動団体から、ある南モンゴル議連役員にメールを一通送ったという。ムンヘバヤルという同志が逮捕されたこと、この件で協力して欲しい旨が記されていたが、そのメールを一度送っただけで南モンゴル議員連盟(議連)への説明などは何も行われていなかった。それでは国会議員が動けるはずもない。

さらに、5月に議連において勉強会が開催され、モンゴル人や支援者の日本人が何人も出席し、その後に懇親会まで開かれていたが、誰一人としてムンヘバヤルの事件については話題にも出さなかったという。そのため、議連はこの件について全く知らない状況だったのだ。

実は「南モンゴルを支援する国会議員連盟」(会長:高市早苗経済安全保障担当大臣、幹事長:山田宏参議院議員)は、世界中で日本にしか存在しない。2021年4月に自民党議員によって結成された議員連盟で、内モンゴルという言葉ではなく、南モンゴルという言葉を冠した議連として発足した。その意義は大きく、同じ中国における人権問題の中でも、チベットやウイグルとは違い、南モンゴルに関しては日本の国会での動きが一歩進んでいる。

にも拘らず、その議連にムンヘバヤルの事件が知らされていなかったのだ。

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