日本が誇る大手食品メーカーに激震!ミツカン「種馬事件」①実子誘拐の地獄|西牟田靖

日本が誇る大手食品メーカーに激震!ミツカン「種馬事件」①実子誘拐の地獄|西牟田靖

「お前! 何者だと思ってるんだ、お前!! この場でサインをしなければ、片道切符で日本の配送センターに飛ばす」「中埜家に日本国憲法は関係ない」。日本が誇る大手食品メーカーが、婿に対してとんでもない人権侵害を行っていた――。2022年8月号に掲載され、大反響を呼んだ記事を特別無料公開!


年表②

養子にすることを強要!

だが、その直後、運命は風雲急を告げる。和英氏・美和氏がロンドンにやって来ることになったのだ。大輔さんは驚きつつも、前向きに捉えることにした。

「この出産をきっかけに、ファミリーが一体となれるかもしれない」

ところが、そうした淡い期待は無残にも踏みにじられてしまうことになった。
息子が生まれて4日後、K常務を従えて産後ケア施設に現れた和英氏・美和氏。2人は孫の顔を見るのもそこそこに、書類を広げ、大輔さんに迫った。

「産まれてきた子どものことだけど、先ずはこの書類にサインをしろ」

書類は「養子縁組届出書」。養父母の欄には、和英氏と美和氏の名前がすでに記されていた。つまり、生後間もない息子を祖父母である和英氏・美和氏の養子にすることを、大輔さん・聖子さんに強要したのだ。

大輔さんは面食らった。それでも、覚悟も決めてこう言った。
「妻はまだ出産直後で、いわば病み上がりです。あまりに突然のことですし、夫婦でしっかり話し合わなければなりません。この書類は一旦預からせていただけませんでしょうか」

少しの沈黙のあと、産後ケア施設の一室に和英氏の怒声が響き渡った。
「お前! 何者だと思ってるんだ、お前!! この場でサインをしなければ、片道切符で日本の配送センターに飛ばす」
「中埜家に日本国憲法は関係ない」

聖子さんは強く動揺し、取り乱して、両親に謝罪を始めた。
「すみません。すみません。私はサインをしますので、許してください」
そして、その場でサインをしてしまった。

和英氏は「謙虚」という言葉の意味を大輔さんに音読させ、さらにたたみ掛けた。

「お前、謙虚にすると言ってなかったか? 俺は、聖子の資産を全て取り上げて、無一文にして放り出すこともできるんだぞ? なぜ、私たちがわざわざロンドンまで来たと思っているのか? (養子縁組届出書は)大輔を追い出すための書類じゃないんだから、サインするよな?」

父として息子にできること

なおも迫る和英氏に対し、大輔さんは引き下がらなかった。
「夫婦で話し合う必要があるので、この場でのサインは勘弁していただきたい」と繰り返し伝え、ひとまず引き取ってもらったのだ。

和英氏・美和氏らが出ていったあと、聖子さんは施設の廊下で泣き崩れた。大輔さんも大きなショックを受けた。渡英前、大輔さんは実印を言われるまま渡していた。2人が届出書にサインをし、それを和英氏・美和氏に送り届ければ、あとはもうどうすることもできない――。

その日の夜、2人は今後のことを話し合った。
「家族3人で幸せに暮らすことが一番大切。義父母に服従したり、ミツカンの仕事に執着したりする必要はないと思う」

そういって、大輔さんは聖子さんに家を出ることを提案した。届出書を和英氏・美和氏に渡すのを拒絶し、その代わり、無一文になってでも一家で家を去ろうと。

しかし、両親にひどく怯えている聖子さんに、その言葉は受け入れられなかった。美和氏から脅迫メールを送りつけられていたのだ。

「(命令に従わなければ)殴られるくらいじゃ済まされない。別れるのが絶対条件」

子どもを産んで5日目の実の娘に、美和氏は容赦のない言葉を投げつけた。離婚だけは回避したいという聖子さんは、泣きながら懇願した。

「両親は大輔さんを家から追い出すつもりはない。私が(両親と大輔さんの)間に入って家族を守る。お願いだから、養子縁組の書類を両親に提出してほしい」

妻子を守るために選択の余地などないと観念した大輔さんは、届出書にサインし、義父母の滞在するホテルに書類を送り届けた。

出産から約1週間後、親子3人で産後ケア施設からロンドンの自宅へ戻ると、大輔さんは家族が増えて3人になったことを改めて実感する。

「赤ちゃんの存在感は特別で、家のなかがさらにパッと明るくなったようでした。育児グッズも一気に増えて、子育て中心の生活に様変わりです。同時に、僕たち夫婦はこれまでにも増して一体感が生まれ、絆が深まったようでした」

産まれたばかりの息子を奪いにきた義父母の行為に、大輔さんはショックを受け、気落ちしたが、それでも彼は前を向き、やれることをしっかりやって生きることにした。可能な限り、父としてできることはしよう――。

大輔さんは腹をくくった。そして「3つのルール」を作った。
・息子に愛情を注ぐ。
・“育児ノート”を作成して息子の記録を毎日残す。
・お風呂は毎日僕が入れる。息子と裸の付き合いをする。
というものであった。

そして、息子と引き離されるまでの1年あまり(日本に一時帰国したとき以外の時期)、毎日欠かさずこれを実行したのであった。平和でゆったりとした幸せな時間を3人は過ごしていた。しかし、それは束の間の幸せであった。

関連する投稿


憲法改正の国会発議はいつでもできる、岸田総理ご決断を!|和田政宗

憲法改正の国会発議はいつでもできる、岸田総理ご決断を!|和田政宗

すでに衆院の憲法審査会では4党1会派の計5会派が、いま行うべき憲法改正の内容について一致している。現在いつでも具体的な条文作業に入れる状況であり、岸田総理が決断すれば一気に進む。


6月10日施行の改正入管法で一体、何が変わるのか?|和田政宗

6月10日施行の改正入管法で一体、何が変わるのか?|和田政宗

不法滞在者や不法就労者をなくす私の取り組みに対し、SNSをはじめ様々な妨害があった――。だが、改正入管法施行の6月10日以降、誰が正しいことを言っているのか明らかになっていくであろう。(写真提供/時事)


大丈夫か、自衛隊! 航空自衛隊の高級幹部選抜試験で不正発覚!|小笠原理恵

大丈夫か、自衛隊! 航空自衛隊の高級幹部選抜試験で不正発覚!|小笠原理恵

「海自ヘリ墜落、2機が空中衝突」(4月20日)、「手榴弾爆発で20代の隊員1人死亡」(5月30日)などトラブル続きの自衛隊だが、最高幹部階級への登竜門である選抜試験でも不正が発覚した――。


中国、頼清徳新総統に早くも圧力! 中国が描く台湾侵略シナリオ|和田政宗

中国、頼清徳新総統に早くも圧力! 中国が描く台湾侵略シナリオ|和田政宗

頼清徳新総統の演説は極めて温和で理知的な内容であったが、5月23日、中国による台湾周辺海域全域での軍事演習開始により、事態は一気に緊迫し始めた――。


衆院3補選「3つ勝たれて、3つ失った」自民党の行く末|和田政宗

衆院3補選「3つ勝たれて、3つ失った」自民党の行く末|和田政宗

4月28日に投開票された衆院3補選は、いずれも立憲民主党公認候補が勝利した。自民党は2選挙区で候補者擁立を見送り、立憲との一騎打ちとなった島根1区でも敗れた。今回はこの3補選を分析し、自民党はどのように体勢を立て直すべきかを考えたい。(サムネイルは錦織功政氏Xより)


最新の投稿


憲法改正の国会発議はいつでもできる、岸田総理ご決断を!|和田政宗

憲法改正の国会発議はいつでもできる、岸田総理ご決断を!|和田政宗

すでに衆院の憲法審査会では4党1会派の計5会派が、いま行うべき憲法改正の内容について一致している。現在いつでも具体的な条文作業に入れる状況であり、岸田総理が決断すれば一気に進む。


【今週のサンモニ】加藤登紀子が暴いた「サンモニ」のダブスタと不寛容|藤原かずえ

【今週のサンモニ】加藤登紀子が暴いた「サンモニ」のダブスタと不寛容|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】世界には「反移民で親LGBT」「愛国的環境保護派」が存在する  中井遼『ナショナリズムと政治意識』(光文社新書)

【読書亡羊】世界には「反移民で親LGBT」「愛国的環境保護派」が存在する  中井遼『ナショナリズムと政治意識』(光文社新書)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】少子化を促進させた『サンモニ』報道|藤原かずえ

【今週のサンモニ】少子化を促進させた『サンモニ』報道|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


6月10日施行の改正入管法で一体、何が変わるのか?|和田政宗

6月10日施行の改正入管法で一体、何が変わるのか?|和田政宗

不法滞在者や不法就労者をなくす私の取り組みに対し、SNSをはじめ様々な妨害があった――。だが、改正入管法施行の6月10日以降、誰が正しいことを言っているのか明らかになっていくであろう。(写真提供/時事)