ウイグル民族の悲劇とメガソーラー
私が現地取材時に発見したのは、剥き出しの土壌の上に大量に野積みされた太陽光パネルだった。数百箱もの段ボール箱には、「トリナソーラー」(Trina Solar)とはっきりと書かれていた。
トリナソーラー。1997年の創業以来、世界中で安価な太陽光パネルを販売し、太陽光パネル供給量世界一になろうかという中国企業だ。近年では日本国内でも一番の特徴である「安さ」を強みに年々存在感を強めている。
そして2020年6月上海証券取引所で新株を新規発行。「スター・マーケット」という名称でも知られる上海証券取引所科創板の技術系企業のマーケットに上場して巨額の資金調達を果たすなど、上海を事実上の本拠地とする企業だ。
このトリナソーラーについてアメリカの有力紙「ウォールストリート・ジャーナル」は8月9日、アメリカ政府がトリナ社製品の輸入を差し止めたと報じた。
これは、太陽光パネルの原材料である石英(せきえい)からポリシリコンを生産し太陽光パネルを組み立てる過程において、新疆ウイグル自治区やその他地域でウイグル人のジェノサイド(民族虐殺)にトリナソーラーが加担・関与している可能性が高いとアメリカ政府が判断したからだ。
ウイグル人権問題を巡っては、中国政府と中国共産党が指導して設置した「再教育センター」などと名付けられた強制収容所で、ウイグル人女性に対する強制避妊手術が行われているが、収容所を奇跡的に脱出した被害者本人の証言で明らかになりつつある。
岩国のメガソーラー事業では、合同会社のスキームを使って上海電力がステルス参入し、自由主義陣営の先進各国が深い懸念を表明しているウイグル人のジェノサイドとの関連が指摘されている会社の太陽光パネルを使って大規模発電が始まろうとしている。
上海電力の中国本社では、経営トップで取締役会長にあたる薫事長を長く勤めていた胡建東氏が死亡事故に関連する不祥事で解任され、今年7月に林華という人物が就任した。
林氏は直前まで新疆ウイグル自治区の中国政府の幹部だった人物だ。上海電力の経営トップが、新疆ウイグル自治区の現状を知り尽くした林氏になったことについて中国の政治事情に詳しい関係者は、
「中国の国営企業では、今年の春以降、習近平と、これに対抗する江沢民らの上海閥や胡錦涛・李克強ら共産党青年団の権力闘争が激化していた」
「中国の太陽光パネル生産の主原料である珪石(元素記号Si)のほとんどが新疆ウイグル自治区で採掘されいてる。上海電力の事業の中で太陽光発電が重みを増す中、アメリカ政府の中国製太陽光パネルの輸入禁止措置など厳しくなる経営環境に対応するために、林氏が大抜擢されたのではないか」
とみている。
こうした動きを見ても、上海電力本社と新疆ウイグル自治区は切っても切れない関係になっていることは間違いない。
岩国のみならず全国各地で上海電力に巨大メガソーラーを好き放題に作らせている日本政府と山口県は、地域住民の安全安心な生活を破壊して恥じないだけでなく、中国によるウイグル人に対する民族虐殺にも加担していると言わざるを得ない。
そして、「合同会社によるステルス参入」「ウイグル人民族虐殺に加担する上海企業のパネル大量使用」など、全ての先鞭をつけたのが橋下徹市長市政下の大阪市だったことを忘れてはならない。