防衛白書によると、令和4年度の自衛隊員の定数は247,154人でそれに対しての現員は230,754人(3月31日時点で16,400人不足している)。
しかも、幹部自衛隊員や准尉、曹といった中堅から高級幹部は90%以上の充足率なのだが、士クラスの若い自衛隊員の充足率は79.8%。現場で実際に戦う若い自衛隊員が圧倒的に足らない。この自衛隊員不足は平成24年度から10年間ずっと続いている。
抜本的な改善策も打ち出さずにいた自衛隊は最前線で戦う戦闘員の現員数が致命的に足らないのだ。現員数を充足するために定年を伸ばし、高齢の自衛隊員を増やすことでカムフラージュしているが、実際に動ける若い戦闘員数は少ない。
少子高齢化の国だから、若い自衛隊員が不足する要因はある。だが、有事に隊員不足を敵が配慮するはずがない。デスクワークを主とした公務員組織なら高齢化の影響は少ないが、軍事組織である自衛隊は違う。日々の訓練による卓越した戦闘能力で困難な作戦を遂行できる体力と気力のある若い自衛隊員が必要だ。
ロシアの強制的な徴兵制は国内に混乱を招いた。徴兵によって集められた兵は戦闘能力も無く統率も取れていないため悲惨な結果となる。ロシアのような強制的な徴兵制は日本では許されない。日本は志願制に則り、多くの若い人が自衛隊に憧れ、誇り持って働ける魅力的な職場にすることを目指さねばならない。
自衛官の給与は魅力的とは言えない
自衛隊の任務は、台風、地震等で被災した地域への災害派遣、領土、領海、領空を守るための警戒活動と戦闘訓練と多岐にわたる。誰でも自衛隊員になれるわけではない。日々の訓練や集団生活、重い職責に耐えうる優秀な人材を選ぶため、身体検査を含めた入隊試験がある。
10年以上、自衛隊は必要な人材を確保できなかった。優秀な人材ほど自衛隊を含む公務員試験を嫌い、条件のいい外資系企業等に流出してしまう。
その原因のひとつが給料だ。平成30年に入隊した任期制自衛隊員(自衛官候補生)の入隊直後3か月の給料明細を見ていただきたい。初任給は総支給額150,725円 、次月133,500円、3か月目が120,150円と続く。
自衛隊員の給与はこの後、令和2年に月額8,600円引き上げられ、自衛官候補生では142,100円になり、一般曹候補生では9,300円引き上げられ、179,200円となった。
一般曹候補生の自衛隊員士長は自衛官候補生から3段階上の階級であり、少し給与水準は高い。その給料明細がこちらだ。