ロシア軍の予備役部分動員の波紋
ロシアのプーチン大統領は9月21日、ウクライナへの軍事侵攻に必要な「部分的な動員令」の発動を宣言した。ロシアには2,500万人の予備役軍人がいるが、そのうちの軍務経験のある予備役30万人を招集する計画だ。
これまでウクライナへ投入された兵士たちは純粋な職業軍人たちばかりではない。ロシア軍では徴集兵を戦場に送り込まないはずであったが、兵員不足から署名の強要が行われている。従来のルールでは、契約書にサインして始めて職業軍人となり、戦地へと送り込まれる。
ロシアの貧しい地方では仕事が少なく、食べるために仕方なく徴集に従っている。彼らには職業軍人となる志もなく、十分な訓練も受けてない。志願兵は戦場に送られる。徴集兵たちの意思に反して、ロシア軍は精神的な圧力だけでなく暴力に訴えて志願契約書にサインさせたという。彼らは何も知らされず、ウクライナの前線に投入された。
戦地につくとすぐに武器を捨て投降するロシア兵士もいる。ウクライナで死亡したロシア兵士の多くはこのような訓練期間の短い兵士だった。
プーチン大統領は予備役から招集される「部分的な動員令」の対象者は特別技能を持つ職業軍人だと強調したが、実態は違う。招集対象ではない大学生や軍務経験のない人や、60歳以上の定年退職者も呼び出された。
「部分的な動員令」が発表された後、その週にロシアを出国する航空便はほぼ完売となった。中には5倍の価格をつけた航空チケットもあるという。徴兵逃れに自分で腕を折る方法がロシアのインターネット検索で上位に入る有様だ。
圧倒的な武力差のあるロシア軍に対して、ウクライナ軍は善戦し再び大幅な後退をさせている。その理由のひとつが、ロシア軍の士気の低さだ。
ロシア人捕虜のインタビューで、彼らは「ナチス」と戦うためにこの地に連れてこられたという。他では「演習だといわれて連れてこられたらウクライナだった」という話が一番多く聞く。戦闘能力もなければ、組織への帰属意識もなく、戦う相手が誰なのかも知らされてない。戦闘するよりも自ら捕虜になろうと動く者も少なくない。
急場しのぎともいえる徴兵や付け焼刃の募集兵では苛烈な戦場で戦えないと、日本人はロシアから学んでほしい。