自衛官候補生よりは給料は上がっているが、集団生活を強いられ、災害地域や危険な防衛の最前線に向かう職業の報酬としては魅力的とは言えない。
米軍の給与はどのような水準なのか
ここで米軍の給与と比較してみる。
志願制の米軍の最も給与の低いランクの現役勤務経験が4か月に満たないE-1クラスメンバーで月々約1833ドル(265,161円。※9月28日のレートで計算。以下の計算はすべて同上)が基本給で、その上に住宅基本手当と生活のための基本手当(BAS)や陸軍ではドリルペイという訓練手当が上乗せされる。
その次の給与グレードE-2クラスが見習いや1士にあたるものだが、この基本給で約2054ドル(297,170円)となる。
また米軍では陸軍ROTC奨学金等の奨学金や大学に入学する諸費用の支援がある。軍人としての業績や成績が認められれば、授業料と諸費用などが毎月もらえるプログラムを申請できる。奨学金には住宅費用や生活費や年間の書籍代も加算される。
その場合、大学卒業後に士官として一定期間は軍に勤務する義務があるが、このような人材が軍だけでなく米国社会の大きな力となる。インターネットが軍事研究から生まれたことは有名な話だが、軍事産業からのスタートアップは経済を活性化させている。
日本もこのような自衛隊出身の高度人材を育成するシステムを構築できれば国力にプラスの影響をもたらすはずだ。
米空母に勤務する若い米兵たちは複数の大学の博士号をとり、長期休暇ごとに大学で新たな学位や博士号をとるために勉強していると誇らしげに語っていた。命の危険もある軍務に就く米兵たちにはその職責に見合う待遇と権利が約束されている。
日本の自衛隊と米軍の待遇の差は軍人に対しての敬意がそのまま報酬額の違いとなっているのではないかと感じる。もし、この米軍の待遇を自衛隊が目指せば、隊員募集に苦悩することは減り、自衛隊への入隊希望者が増えるはずだ。
人材が不足し続ける自衛隊は、国民から多くを求められるが、働いても報われることが少ない職業と言わざるを得ない。「名誉」だけでは人は集まらない。待遇改善は国防を担う自衛隊員へ敬意を示し、その職責を正しく評価することだと私は思う。