撮影を注意すらできない自衛隊
我が国には海上自衛隊の艦艇や桟橋撮影を禁止する法律はない。1985年第102国会で「自衛官によって写真撮影を妨害された事件に関する質問主意書」という質問が行われた。陸上自衛隊八戸駐屯地正門前で「社会新報」の記者が基地内を撮影しようとしたところ、自衛官によって写真撮影を妨害されたという趣旨のものだった。
この答弁で当時の内閣総理大臣中曽根康弘氏は「防衛庁としては、各部隊等に対して写真撮影を行わないよう強制することはできない旨適宜指導している」と回答している。自衛隊には強制力が認められず、今も続いている。
ドローン禁止法第一号の摘発事例はこの呉基地上空での飛行事例だったが、広島地検は2019年12月10日付で不起訴処分とした。
防衛省は飛行禁止区域を基地の敷地に設定しているが、この改修工事を行うジャパンマリンユナイテッドの敷地は規制対象外だ。私有地への無許可ドローン撮影について争うことは可能だろうが、企業側にはそのメリットはない。 国も防衛省も外部から撮影可能なものは撮影されても仕方ないという立ち位置を変えていない。今後も空母改修工事は全世界に配信されることだろう。
いつまで日本政府と国会は軍事機密をダダ漏れさせるのか?
これは前述のように自衛隊のせいではない。1985年当時、撮影を止めようとした自衛隊員は注意するべきではなかったとされた。自衛隊は国会によって何もできないように手足を縛られている。責任を負うべきなのは、これまで国防と真剣に向き合わなかった政府と国会のせいだろう。
1955年憲法改正をするために結党された自民党はいまだに憲法改正の発議すらできない。自衛隊は今も撮影は自由だという国会の質問主意書の答弁からその決まりを守っている。政治が間違いを認め、変えなければ自衛隊は撮影を注意すらできない。
日本の情報管理の甘さを強く批判する米国
【空母化改修(27)】安倍元首相が凶弾に倒れた日!護衛艦「かが」の様子②は…艦首は海にあった!抜群のクレーン操作!生映像です!【戦艦大和造船所】海上自衛隊 呉基地 2022年7月8日 DDH-184
動画タイトルにわざわざ「安倍元首相が凶弾に倒れた日!」といれているところが……
この事態は、思っている以上に深刻だ。諸外国は情報を流出しないために徹底した対策をとっている。かたや我が国では軍事情報を今もたやすく収集される環境のままだ。我々は自分たちの軍事情報を詳細に知っている敵に挑む覚悟をしなければならない。
彼らは自衛隊を研究し尽くしているはずだ。
撮影禁止を強制する法整備が間に合わないのなら、ドックを衝立や屋根で完全に遮断するしかない。薄布で隠しているが、動画ではめくれ上がった瞬間をしっかりとらえられている。小手先のやり方ではだめだ。積み上げ式で防衛予算増額をする岸田内閣の言葉が妄言でなければ、「せめて空母改修工事くらいは秘密保全しろ!」と言いたい
2007年に米国議会調査局がまとめたF22に関する報告書では、同年に海上自衛隊で発生したイージス艦情報の機密漏えい事件を例に挙げ、「最新技術が不注意によって第三国に流出する可能性がある」と日本の情報管理の甘さを強く批判している。
こんな軍事情報漏洩し放題の日本に米国が愛想を尽かさないか、とても心配だ。