例えば2011年度に経済産業省がスマートコミュニティに関する実証実験を行うために全国の自治体向けに用意した予算156.8億円のうち、実に136.6億円が大阪市に振り向けられていた。
日本全体のスマートコミュニティに関する予算のうち、87%以上が大阪市に与えられたことになる。こうなると大阪市の責任は重大だ。
地方自治体が国から補助金を受給する場合、国が策定した事業計画のガイドラインに沿った実施計画を綿密に練り上げた上で審査を受け、合格した自治体だけが補助金を受け取ることが出来る。そして、事業が計画通りに行われなかった場合には、補助金をカットされたり全額返還を求められたりする。
だから自治体サイドは、一旦受け取った補助金を召し上げられる最悪の事態を防ぐために、国の審査に合格した計画通り、完璧に事業を進めようとする。
ところが、「咲洲地区スマートコミュニティ実証実験」では、国に提出した計画の「ある部分」だけ、補助金受給後に変更された。その「ある部分」こそ、現在上海電力がメガソーラー発電を行なっている問題の土地なのだ。
大阪市が国に提出していた計画書では、小規模な「分散型太陽光発電」を4ヶ所に設置して、それらを連結して一体として運用するというのが実証実験の根幹だった。ところが4ヶ所のうちの1ヶ所が実証実験から外され、市民の知らないうちにメガソーラー事業にすり替わっていたのだ。
「国際戦略総合特区」を生み出した橋下徹
そして「咲洲地区スマートコミュニティ実証実験」は、国に提出した計画通り正確に事業を遂行しなければならない、もう一つの大きな理由があった。
それは、この実証実験が「関西イノベーション国際戦略総合特区」という、大阪市が近隣自治体の5自治体と共同で策定した大プロジェクトに組み込まれたからだ。
「総合特区」とは、国際競争力の強化や地域の活性化を目指し、各自治体の特色を活かしたプロジェクトに対して国が税制や規制などの面で優遇措置を与えるというもので、2011年6月から本格的にスタートした。
「関西イノベーション国際戦略総合特区」は、橋下徹府知事時代の大阪府が旗振り役となって、大阪府・大阪市・兵庫県・神戸市・京都府・京都市の6自治体が参加する一大プロジェクトとなった。
柱に掲げられたのが「ライフサイエンス&グリーン」、すなわち「先端医療」と「環境エネルギー」だった。
だからこそ、「咲洲地区スマートコミュニティ実証実験」はこの特区の中核事業として位置付けられた。
ところが、この橋下氏肝煎りの「関西イノベーション国際戦略総合特区」の中核事業である実証実験の一部が白紙撤回され、いつの間にかその土地が「上海電力によるメガソーラー事業」にすり替わってしまったのである。
そんな大それたことが、大阪市の副市長や港湾局長ごときに出来るわけがない。
橋下徹氏の府知事時代からの大プロジェクトの中核に大きな変更を加えられる人物はただ一人、橋下徹氏本人だけである。
(つづく)