【橋下徹研究⑨】「副市長案件」に潜む2つの巨大な闇|山口敬之【WEB連載第9回】

【橋下徹研究⑨】「副市長案件」に潜む2つの巨大な闇|山口敬之【WEB連載第9回】

橋下徹氏は「副市長案件」「問題ない」「花田らは完全に炎上商法」の立場だが、罵詈雑言のみでこちらの問いかけにはまったく答えていない。咲洲メガソーラーは、外形上は「月額55万円の市有地賃借契約」であり、通常なら「局長案件」だったはずだ。なぜ、「副市長案件」に格上げされたのか。


大阪市長は何をすべきだったか

橋下氏や松井氏は、
「手続きに違法性がないから問題ない」「外国企業だからと言って排除できない」「地方自治体の首長の仕事ではない」という。

しかし、法的手続き的に上海電力を排除できなかったとしても、上海電力の参入を知った段階で、大阪市のインフラを守るために大阪市長としてできることや、やるべきことはたくさんあったはずだ。

上海電力が咲洲メガソーラーに関与するということを大阪市が確実に知ったのは、いちばん遅くても2014年3月16日、咲洲メガソーラーの着工式の日だ。

何しろ入札に参加せず、完全な無契約・無関係な存在だった上海電力の社長がこの日、突然、咲洲メガソーラーの着工式に現れ、落札者である伸和工業と仲良く並んで鍬入れ式を行ったのである。

橋下徹市長は上海電力の参入を着工式以前から知っていた可能性が高いが、少なくともこの日以降は、「上海電力の参入は知らなかった」「副市長案件だから知らなかった」という言い訳は成り立たない。

何しろ鍬入れ式には大手マスコミが取材にやってきて、朝日新聞や新華社通信など内外のメディアが大きく報道したのだ。

私がまず問題にしたいのは、「橋下徹市長は上海電力の参入を知ってどう行動したか」ということである。たとえ制度的に上海電力の参入を防ぐことができなかったとしても、
・まず市民に上海電力参入の事実を伝え、
・国防動員法とのかかわりについて上海電力に質問状を送ったり、協議を行って念書を交わしたりするなど、市民の心配を払拭する努力をなぜしなかったのか。

大阪市のインフラの安全確保に向けて、市長にはできること、やるべきことがいくらでもあったはずだ。そもそも維新は「徹底的な情報公開」を売りにしてきた政党ではなかったのか。なぜ上海電力の参入が確定した段階で、市民にアナウンスしなかったのか。

もし国防動員法の観点からも問題がないと判断したのであれば、その見解と根拠を発表して、市民を安心させるべきだった。

しかし橋下氏は上海電力の参入を市民にアナウンスしなかった。「徹底した情報公開」という掛け声とは裏腹に、なぜ真逆の「隠蔽」という判断をしたのだろうか。

お得意の「徹底的な情報公開」はどこへ行った?

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橋下氏・吉村氏・松井氏という3人の維新の歴代大阪市長は、今日に至るまで、上海電力の事業参加について大阪市民に一切のアナウンスをしていない。

その一方で、3氏はネット動画やツイッターなど非公式な媒体で「手続きに問題はなかった」「橋下氏は関与していない」など手続き論をつぶやくばかりで、インフラの安全確保について大阪市の方針を市民に伝える気などまったくないのだ。

橋下氏に至っては、批判者を口汚く罵り、上海電力問題とは無関係なことで誹謗し、醜悪な人格を余さず露呈している。残念なことだ。

中国に国防動員法という法律があるからこそ、今回の上海電力問題が大きな注目を浴びているのだ。

今からでも遅くはない。大阪市は、上海電力のメガソーラー参入が国防動員法に照らして問題がないというなら、その根拠と見解を市民に示すべきだ。

問題があると認識しているのであれば、上海電力側と協議を続けるなり、契約解除の方法を模索するなり、市民の安全確保のために考えうる全ての措置をとった上で、維新お得意の「徹底的な情報公開」に邁進すべきだ。それがまともな政治、まともな政党の選択だ。

国民・市民の生命財産を守るために全力を尽くさないどころか、情報公開を渋り、自己弁護に走るような集団に、大阪やこの国の政治を託すわけにはいくまい。

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