要するに、松井市長も吉村知事も、咲洲メガソーラーについての重要事項は全て田中清剛副市長が判断したのであって、橋下市長には相談せず指示も受けていないというのである。
そう言えば橋下氏も「年間数万もある案件の全てを市長が把握できるはずがない」との主旨のツイートをしている。「市長が何万件もの入札や決裁をすることは不可能」という論理だ。ところがこの説明には、実は決定的に不自然な所が2つある。
なぜ「局長」でなく「副市長案件」に昇格したのか
咲洲メガソーラーは、外形上は「月額55万円の市有地賃借契約」である。それなら、通常なら「副市長案件」ではなく、「局長案件」だったはずなのだ。
たとえば大阪市は今年2月、咲洲メガソーラーがある此花区で同様の市有地賃借の入札を行なっている。
入札予定価格と落札価格を咲洲メガソーラーと比較すると、次のようになる。
[此花区桜島]
入札予定価格 658,909円
落札価格 1,100,000円
[咲洲メガソーラー]
入札予定価格 550,000円
落札価格 550,001円
桜島物件の決裁を行ったのは大阪市契約管財局長。副市長や市長に報告したかどうかは別だが、決裁の最後のハンコをついたのは局長だ。こういうものを「局長案件」と呼ぶ。
桜島物件も咲洲メガソーラーも、市有地の賃借に関する「制限付き一般競争入札」だ。もし大阪市が「局長案件」と「副市長案件」と「市長案件」を金額の大きさで決めているのであれば、桜島よりも予定価格も落札価格も低い咲洲は「副市長案件」「市長案件」ではなく「局長案件」だったはずだ。
咲洲メガソーラーを扱った港湾局は、フェリーやコンテナ船のバースなど巨額の賃借契約を担当するため、特に2012年当時は局長の権限が強く、咲洲のような月55万円程度の不動産賃借は間違いなく局長の裁量で決裁できたという。
金額的には安い咲洲物件が「局長案件」ではなく「副市長案件」に格上げされたのはなぜなのだろうか。
それはもちろん、金額以外のことが考慮されたからである。その決め手となった人物こそ、2011年12月に市長に就任した橋下徹氏だった。