余計な挑発よりも、防衛力強化を急げ!
では、日本の防衛戦略であるクアッドは機能するだろうか。
まず、アメリカは核保有国とは戦わないことが今回明確になった。台湾が攻撃されれば傍観はできないかもしれないが、尖閣を率先して防衛することはあり得ない。オーストラリアは前述のように、ソロモン諸島が中国の基地化したら、軍事的能力が大幅に制限されることになる。インドは独自路線を歩んでいる。反中だが、今回ロシア制裁には加わらなかった。ロシアから防衛装備の供給を受けているからだ。また、インドはアメリカに対しても不信感を持っている。
また、オーストラリアでは保守的なモリソン政権が破れ、リベラルで親中的な労働党政権が誕生してしまった。モリソン政権下でのパンデミック対応に批判が集まったこともあるが、中国系移民が増加し、モリソン政権の対中強硬策を嫌って労働党に票が流れた選挙区も複数見受けられた。自国に対して敵対的な国から大量に移民を受け入れることの危険と矛盾が露呈した。
つまり、日本はウクライナに同情し、ロシアを犯罪者呼ばわりしながら、気が付けば「不良に囲まれたのび太」状態になっているのである。ドラえもんはいないし、タケコプターで逃げることもできない。ただ敵を増やしただけで終わる可能性がある。
だから、ロシア苦戦のメディア報道を見て安堵したり喜んだりしている場合ではまったくないのだ。ウクライナへの人道支援はしっかりすべきだし、西側の一員として、ロシアの軍事行動を非難し、早期停戦を呼び掛けることも必要だ。
しかし、アメリカの言いなりになって、自らの脆弱性を省みずに、こちらから先にロシアの外交官を追放するような敵対行為を取るのは無駄な報復合戦を招くだけで、日本の安全保障の向上に1ミリも貢献しない。こちらから余計な挑発はせずに、大急ぎで自らの防衛力強化に務めなければならない局面なのだ。
ランボーの異名を持つ新任のラーム・エマニュエル米国大使に煽られたのか、自衛隊の備品をウクライナに送ったのも痛恨の失敗だ。陸上自衛隊の正式な迷彩服を着て誰が戦うと思っているのか。
親ウクライナか、親ロシアかという悪しき二元論
先日、アゾフ連隊の司令官と思しきウクライナ軍の男が自撮り動画を2本投稿した。1本は、日本の公安調査庁が、アゾフ連隊が白人至上主義のネオナチ集団だという記述を2021年の国際テロハンドブックから取り下げたことを自慢し、諸外国にも取り下げを求めるメッセージ。
もうひとつは、今回の戦争に関する神話を否定すると称し、ロシア軍はロシアでもスラブでもなく、黒い悪魔(黒人)と黄色い羊(東洋人)の混成であり、この戦争は邪悪な多国籍アジア人部隊との戦争だと吐き捨てるもの。
彼らは未だに正式にナチ武装親衛隊のマーク(ヴォルフスアンゲル)と黒い太陽を正式に使用する白人至上主義者集団なのだ。そんなアジア人蔑視の連中が自衛隊の迷彩服に身を固めて戦うことは到底容認できない。ちなみに、この司令官の部隊はアゾフを名乗るが、正式な国家親衛隊のアゾフではないという指摘があったが、同じことだ。ウクライナで主に市街戦を戦っているのはアゾフ及びそれに類する過激な民兵集団なのだ。
もちろん、極右勢力はどの国にも存在する。しかし、正式にナチのシンボルを使う部隊が正規軍となり、創設者が政府の中枢に入っているのはウクライナぐらいなものだ。そういう国でありながら、いや、そういう国だから、昭和天皇をヒトラーやムッソリーニと並べて侮辱することに頓着ないのだ。アメリカやNATOは承知の上でそんなアゾフに武器を与え、軍事訓練を施してロシアにけしかけた。
無論、一般のウクライナ人はネオナチでもなく、被害者である。日本は感謝などされなくてよいから、人道支援は惜しまず行い、あとは自国のエネルギー供給源の確保、憲法改正、防衛力の強化に黙々と取り組むべきだ。
ウクライナは対ロシアの噛ませ犬として徹底的に利用された挙句に侵略された。日本も極東で中国に対する噛ませ犬として利用されかねない。同盟国アメリカには様々な人々がいる。戦争を忌避する人々もいれば、無理やり定期的に戦争を起こそうとする人々もいる。
アメリカが決して一枚岩ではないことを理解し、同盟を日本の国益に照らして機能させる努力をしながら、自国は自分たちで守り抜く決意を固めねばならない。こうしているうちにも北朝鮮はミサイルを乱射し、そのなかにはウクライナ製のエンジンを積んだものもあるのだ。
このままでは日本は極めて危険な状況に陥る。そのことに多くの日本人が気付く頃には、手遅れになっているかもしれない。親ウクライナか、親ロシアか、の二元論で喧嘩している場合ではない。メディアを鵜呑みにせず、日本人は頭を冷やして真剣に自らの心配をすべき時なのだ。