米露のプロパガンダに踊らされるな!|山岡鉄秀

米露のプロパガンダに踊らされるな!|山岡鉄秀

主流メディアで流される情報がいかに恣意的に操作されているか、骨身にしみて知っているはずだ。それを思い知らされたのが1991年の第1次湾岸戦争である。油にまみれた水鳥、そして、泣きながらイラク人兵士の蛮行を議会で証言したクウェート人少女。それらは戦争広告代理店によって仕組まれたフェイクニュースだった――。親ウクライナか、親ロシアか、の二元論で喧嘩している場合ではない!


西側メディアの情報だけを鵜呑みにすると…

日本人の多くは、狂ったプーチンが無謀な戦争を起こし、国際社会で孤立した挙句、国内でも権力基盤を失って自滅すると信じているようだが、そうならない場合も想定する冷静さを失ってはならない。

たとえば、前述のように、キーウとハルキウを攻め落とせなかったのは誤算に見える。包囲すればゼレンスキーが亡命して政権が崩壊するという目論見が外れたのは事実かもしれない。そして、プーチンには大ロシア帝国回帰の野望があったことも間違いない。

プーチンの論文を読めば、プーチンの野望は、軍事的合理性よりも、歴史観、宗教観に基づくことがわかる。しかし、2014年からウクライナ軍を立て直すNATO担当者だったジャック・ボー元スイス参謀本部大佐が指摘するように、ロシアは最初から危険な市街戦をするつもりはなく、南南東のウクライナ軍を破壊するという主目的を果たすためにウクライナ軍を分断し、背後から攻撃させないための陽動作戦であったという見方もある。

さらに、ロシアが戦力を分散して侵攻したことが軍事的にあり得ない愚行であるとほとんどすべての専門家が口を揃えるが、分散奇襲攻撃は昔からロシアが得意とする戦法であるという。

ジャック・ボー氏は3月25日の段階で南南東に集結していたウクライナ軍は3方から侵入したロシア軍に作戦通りに包囲され、いわゆる「クラマトルスクの大窯」のなかで少しずつ無力化されていると指摘するが、西側メディアでは絶対に報道されない。

つまり、ジャック・ボー氏が指摘するのは、ロシアの軍事思想は西側のそれとは根本的に異なるのにもかかわらず、西側の専門家は西側の常識だけで状況を判断し、西側メディアがそれを伝えるので、正しい状況を把握することは非常に困難なうえ、視聴者をミスリードするというのだ。

実際、ジャック・ポー氏の論考をグーグルで検索しても見つけられず、DuckDuckGoで検索したら出てきた。

「ロシア擁護派」というレッテル

Getty logo

フランスの歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏は、ロシアについて完全に予想が外れたことが2つあると指摘している。ひとつは、軍事的に想像していたほど強くなく、大きな損害を出したこと。もうひとつは、逆に脆弱だと思われていた経済が想定外に強く、一旦暴落したルーブルも制裁前のレベルに回復し、国内情勢も落ち着いていることだ。

制裁による需給ひっ迫でエネルギー価格が上昇を続ける一方で、ドイツを始めとするEU諸国はロシアからの天然ガス輸入を続けているし、中国やインドが輸入量を拡大しているから、ロシアの収入が大きく落ち込むことはなかった。逆に制裁に回った国々が急激なインフレに見舞われている。

ロシアの軍事的な弱さとしては、多くの指揮官の戦死が象徴的に伝えられるが、騎馬隊を本流とするロシアの機甲部隊にとって指揮官は師団長であろうと、たとえ戦死しても先頭を走るのが誇りなので、指揮官の戦死は珍しくないとの見方がある。

また、旗艦モスクワの撃沈がロシア軍の大苦戦を印象付けたが、キーウやハルキウとは対照的に、ロシア軍は南東部のマリウポリは明らかに占領する前提で猛攻撃をかけ、すでに占領。東部のドンバスの支配地域を拡大し、南部のクリミアの北部を水源地として確保し、その2つを繋ぐ黒海沿岸部分とマリウポリを占領すれば、ロシアは戦略的目標の完遂と勝利を宣言できるだろう。

ウクライナは大きいので、これでもヨーロッパの一国ぐらいの面積に相当してしまう。ロシアはこれを新たな緩衝地帯とし、ノヴォロシア(新ロシア)と呼ぶことになるかもしれない。

そして、ゼレンスキー政権とNATO不加入などを条件に停戦合意する。ゼレンスキーは逃亡せずに奮戦したヒーローとして称賛され、政権を維持するか、あるいはイスラエルなどの外国に亡命し、ウクライナの西側ではポーランドの影響が強まるかもしれない。

ロシアからヨーロッパへの天然ガス輸出は継続し、徐々に拡大して元の水準に戻る。ノルドストリーム2も使用開始される。アメリカの軍需産業は莫大な利益をあげる。こういうシナリオも想定しておかねばならない。

しかし、このように複眼的な視点を持って考察し、意見を述べるとロシア擁護派だとレッテルを貼られる。ロシアをひたすら敵視し、好戦的な言動を保持しないと非国民呼ばわりされてしまうのがいまの日本だ。

関連する投稿


憲法改正の国会発議はいつでもできる、岸田総理ご決断を!|和田政宗

憲法改正の国会発議はいつでもできる、岸田総理ご決断を!|和田政宗

すでに衆院の憲法審査会では4党1会派の計5会派が、いま行うべき憲法改正の内容について一致している。現在いつでも具体的な条文作業に入れる状況であり、岸田総理が決断すれば一気に進む。


6月10日施行の改正入管法で一体、何が変わるのか?|和田政宗

6月10日施行の改正入管法で一体、何が変わるのか?|和田政宗

不法滞在者や不法就労者をなくす私の取り組みに対し、SNSをはじめ様々な妨害があった――。だが、改正入管法施行の6月10日以降、誰が正しいことを言っているのか明らかになっていくであろう。(写真提供/時事)


大丈夫か、自衛隊! 航空自衛隊の高級幹部選抜試験で不正発覚!|小笠原理恵

大丈夫か、自衛隊! 航空自衛隊の高級幹部選抜試験で不正発覚!|小笠原理恵

「海自ヘリ墜落、2機が空中衝突」(4月20日)、「手榴弾爆発で20代の隊員1人死亡」(5月30日)などトラブル続きの自衛隊だが、最高幹部階級への登竜門である選抜試験でも不正が発覚した――。


中国、頼清徳新総統に早くも圧力! 中国が描く台湾侵略シナリオ|和田政宗

中国、頼清徳新総統に早くも圧力! 中国が描く台湾侵略シナリオ|和田政宗

頼清徳新総統の演説は極めて温和で理知的な内容であったが、5月23日、中国による台湾周辺海域全域での軍事演習開始により、事態は一気に緊迫し始めた――。


全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米に広がる「反イスラエルデモ」は周到に準備されていた――資金源となった中国在住の実業家やBLM運動との繋がりなど、メディア報道が真実を伝えない中、次期米大統領最有力者のあの男が動いた!


最新の投稿


憲法改正の国会発議はいつでもできる、岸田総理ご決断を!|和田政宗

憲法改正の国会発議はいつでもできる、岸田総理ご決断を!|和田政宗

すでに衆院の憲法審査会では4党1会派の計5会派が、いま行うべき憲法改正の内容について一致している。現在いつでも具体的な条文作業に入れる状況であり、岸田総理が決断すれば一気に進む。


【今週のサンモニ】加藤登紀子が暴いた「サンモニ」のダブスタと不寛容|藤原かずえ

【今週のサンモニ】加藤登紀子が暴いた「サンモニ」のダブスタと不寛容|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】世界には「反移民で親LGBT」「愛国的環境保護派」が存在する  中井遼『ナショナリズムと政治意識』(光文社新書)

【読書亡羊】世界には「反移民で親LGBT」「愛国的環境保護派」が存在する  中井遼『ナショナリズムと政治意識』(光文社新書)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】少子化を促進させた『サンモニ』報道|藤原かずえ

【今週のサンモニ】少子化を促進させた『サンモニ』報道|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


6月10日施行の改正入管法で一体、何が変わるのか?|和田政宗

6月10日施行の改正入管法で一体、何が変わるのか?|和田政宗

不法滞在者や不法就労者をなくす私の取り組みに対し、SNSをはじめ様々な妨害があった――。だが、改正入管法施行の6月10日以降、誰が正しいことを言っているのか明らかになっていくであろう。(写真提供/時事)