米露のプロパガンダに踊らされるな!|山岡鉄秀

米露のプロパガンダに踊らされるな!|山岡鉄秀

主流メディアで流される情報がいかに恣意的に操作されているか、骨身にしみて知っているはずだ。それを思い知らされたのが1991年の第1次湾岸戦争である。油にまみれた水鳥、そして、泣きながらイラク人兵士の蛮行を議会で証言したクウェート人少女。それらは戦争広告代理店によって仕組まれたフェイクニュースだった――。親ウクライナか、親ロシアか、の二元論で喧嘩している場合ではない!


オーストラリアから衝撃的なニュース

では日本は今回のヨーロッパの戦争から何を得ただろうか。

今後、中国とロシアの連携は確実に強まるだろう。ロシアの孤立と苦戦を見た中国が、距離を置くためにロシアの外交上の格付けを下げたという指摘もあるが、もしロシアが戦略的勝利を成し遂げれば、中国が優位に立ちながらも関係が強化されていくだろう。

イギリスのタイムズが、ロシアのウクライナ侵攻直前、中国からウクライナへのサイバー攻撃が行われたとする情報機関の文章を入手したと報道した。攻撃は2月20日の北京冬季五輪閉幕前に開始され、ロシアがウクライナ侵攻を開始した2月24日の前日である23日にピークに達したとのこと。

攻撃対象はウクライナの国防省関連機関、国境警備当局、銀行、鉄道、核関連機関で、ロシアが中国に侵攻計画を伝え、中国が支援を約束していたことが伺える。北京で会ったプーチンと習近平は間違いなくこの話をしていただろう。習近平はプーチンのウクライナ侵攻計画を聞いて、支援を約束しながら、北京冬季五輪閉幕を待ってくれるように頼んだのだろう。

一方で中国は、得意のサイレント・インベージョンを着実に進めている。

オーストラリアから衝撃的なニュースが届いた。

中国がソロモン諸島と安保協定を結んでしまったのである。協定が準備されている事実は、草案がネット上に流失したことで発覚した。草案には、中国艦艇の寄港の許可、物資補給、治安維持目的での中国の武装警察や軍の派遣を可能にする内容が含まれているという。

第2次大戦中の激戦地、ガダルカナル島を含むソロモン諸島はオーストラリアのすぐ北に位置し、この協定の実現はオーストラリアとニュージーランドの国防に深刻な影響を与える。
なぜこんなことが起きてしまったのか。

中露の分断を図るのが日本の戦略目標

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南太平洋の国々は弱小だが、政治的な汚職も蔓延している。現地からの情報によると、ソロモン諸島の首相は弾劾されて失職寸前だったが、中国から賄賂を貰った議員たちが首相の支援に回り、弾劾を免れた経緯があったそうである。その見返りとして安保協定を結んだというわけだ。

これは中国の常とう手段であり、かつてフィリピンでも似たようなことがあった。1991年、フィリピンの上院で、米軍のスービック海軍基地の用地のリースを延長するかどうかの評決が行われ、米軍から10年間延長の要望があったにもかかわらず、投票の結果、リースを延長しないことになった。後でわかったのは、中国共産党が組織をフィリピンに送り込み、上院議員を買収していたということである。

リース契約が終わり、米軍が撤退すると、待ってましたと言わんばかりに中国はフィリピンが領有を主張していたミスチーフ礁を占領して軍事施設を建設し、北部ルソン島沖のスカボロー礁にも公船を常駐させて実効支配を進めた。フィリピンは慌てて米軍との協力強化を求めたが、後の祭りだ。

このように、汚職や腐敗があるところを狙って中国は干渉工作を仕掛けてくる。世界の目がウクライナとロシアの戦争に気を取られている間にも、それは着々と進行して行く。そして、今後は中国とロシアが協力し合うケースが増えることが予想される。

ウクライナに感情移入してロシアを敵視する日本の政治家は忘れているのかもしれないが、日本は地政学的にロシアと中国に挟撃される位置にあり、さらに、中露の支援を受ける北朝鮮まで隣にある。中国とロシア、そして北朝鮮が日本を共通の敵として共同作戦を実行したらどうなるのか。

中国が台湾・尖閣を攻撃するとき、ロシアが北方から何らかの軍事行動を起こし、北朝鮮がミサイルを撃ち込んできたら、自衛隊の対応は分散されてしまい、台湾の応援も尖閣の防衛もできなくなってしまうかもしれない。三正面作戦という、軍事的には最悪の状況となる。つまり、たとえプーチンが嫌悪の対象であったとしても、常に中露の分断を図るのが日本の戦略目標でなければならない。

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