虚偽の情報が飛び交う情報戦の実態
地上波、ネットを問わず、主流メディアでは連日ウクライナの善戦とロシアの劣勢が伝えられ、ロシアの敗北は確実なようである。実際、プーチンにも誤算があったことは事実だろう。予想に反してゼレンスキーは逃亡せず、キーウやハルキウは直ぐに陥落しなかった。
したがって、政権崩壊は起きなかった。プーチンにはウクライナとベラルーシを内包する古代帝国再建の悲願があったことは間違いない。それは帝国主義の謗りを受けるだろう。
西側主流派メディアによれば、ロシア軍撤退後のキーウで多数の市民の遺体が発見され、郊外のブチャではロシア軍による市民の虐殺があったとされ、ロシアとプーチンへの非難がますます高まっている。これらの情報の真偽についての議論もあるが、著名人も含めて多くの人が西側主流メディアの内容をそのまま信じ、疑問を呈する人は陰謀論者のレッテルを貼られる傾向がある。
無残に破壊された都市と逃げ惑うウクライナ国民の姿に胸が痛まない人はいない。プーチン、つまりはロシアの行為は完全な侵略行為であり、国際法違反であることに疑いの余地はない。
しかし、現代の戦争がハイブリッド戦であり、情報戦もまた戦争の一環であることは指摘するまでもない。明らかに双方から相手を貶める目的の虚偽の情報が飛び交っている。
ロシアのプロパガンダには直ぐに嘘とばれる粗雑なものが多いのに対し、ウクライナ側のプロパガンダはより洗練されていて、明らかに欧米情報機関や広告代理店の支援を受けていることが伺われる。
戦争広告代理店によって仕組まれたフェイクニュース
我々は主流メディアで流される情報がいかに恣意的に操作されているか、骨身にしみて知っているはずだ。それを思い知らされたのが1991年の第1次湾岸戦争である。
油にまみれた水鳥、そして、泣きながらイラク人兵士の蛮行を議会で証言したクウェート人少女。それらが戦争広告代理店によって仕組まれたフェイクニュースだったとは夢にも思わず、世界中が信じて怒りに震えた。2003年の第2次湾岸戦争では、サダム・フセインが大量破壊兵器を隠し持っていることが安保理決議違反とされたが、結局まったくの虚偽だった。
2020年の米大統領選挙に関する報道も酷かった。不正の可能性を指摘すれば陰謀論者と罵られたが、粘り強い調査の結果、1年以上経って、何が起こったか、かなり明らかになってきた。主流メディアはこぞってハンター・バイデンのいわゆる「地獄からのラップトップ」を陰謀論と断じていたが、いまになってニューヨークタイムズもワシントンポストも本物だったことを認めている。
ことほど左様に、主流メディアの報道は鵜呑みにできないのが常識だと言っても過言ではない。彼らは自由な立場から発信しているのではなく、一定の方向性を持つイデオロギーに支配されている。上位の株主がほとんど一緒であることからもそれがわかる。
さらに地上波のみならず、ネットのプラットフォームも言論統制のツールになってしまっている。だから、個人的心情は横に置いて、どちらサイドから流される情報も鵜呑みにはせず、真実が判明するにはしばらく時間がかかると思っていなければならないのである。
これは、ロシアのような独裁性の強い国家発の情報であろうと、米国など西側発の情報であろうと、同じことである。