一方、バイデンにも「ウクライナ疑惑」がある。バイデンがオバマ政権で副大統領を務めていた頃のことだ。次男のハンター・バイデンがウクライナのエネルギー会社ブリスマの取締役に就任して高額の報酬を受け取り、その見返りにバイデンの政治力を使ってブリスマの捜査を担当していたウクライナの検事を解任させるなど、同社に様々な便宜を図ったというのだ。
バイデン自身、外交問題評議会の集まりで、この会社を調べようとしたウクライナの検事を政治的圧力で解雇させたと言われている。
バイデンの場合は弾劾裁判にかけられていないから、どこまでが本当かわからないが、バイデン政権とウクライナが持ちつ持たれつの関係にあることは間違いない。
ウクライナは米国を利用しようとしている。04年、ウクライナ大統領選挙の決選投票をやり直しさせ、結果を覆したオレンジ革命後から、ウクライナはワシントンでのロビー活動を拡大した。2020年に入ってからウクライナのロビー活動はさらに大きくなり、アラブ首長国連邦やサウジアラビアの活動量を上回った。
ウクライナの人権団体や天然ガス大手は、米国のロビイングに大金をつぎ込んでいる。ロビイストたちは政治を動かし、マスコミが飛びつきそうな「情勢」を企画し、新聞の見出しに上げる。ウクライナの狙いは軍事支援とNATO加入だ。
それがロシアに侵略されたクリミア半島と東ウクライナのドネツク地方、ルガノスク地方を取り戻す唯一の方法だと考えている。
一方、バイデンもウクライナを支持率回復に利用しようとしている。バイデン政権は発足してから、コロナ対策の失敗、治安の悪化、アフガンの撤退など失政続きだ。このままでは、2022年の中間選挙でいい結果を残せそうにない。
バイデンはウクライナの問題で、外交的にも軍事的にも、ロシアを圧倒して米世論の風向きを変えようと考えているのだ。
ウクライナ人の未来は、残念ながら首都キエフではなく、遠いモスクワやワシントンで決められていると言っても過言ではないだろう。「ウクライナ情勢」は、米ロのチェスゲームの一駒にすぎない。
(初出:月刊『Hanada』2022年2月号)
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