北京はTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)配備と関連し、反韓民族主義者らによる暴力的行動を促し、ロッテ百貨店を中国から追い出す等、韓国に激烈な反応を示した。他国がこの状況を見て覚醒すべきだったのだが、不幸にもそうはならなかった。2020年、北京が豪州の中国輸出を禁止する一連の貿易規制を断行すると、多くの豪州人が驚いた理由もこのためだった。北京の不当な貿易規制は、中共の影響力に対抗策を講じた豪州政府に対する不満を示す意図があった。
北京が政治的戦争に用いる武器は交易と投資だけではない。既に、韓国の財界には北京の満足を唯一の目標とし活動する強力な利益集団が席巻している。北京はまた、韓国の学界と政界、文化界、メディア界の指導層全般に渡り北京擁護者と融和論者らを確保している。中共は、影響力行使者はもちろん諜報工作員らも動員し、大規模ネットワークを構築。彼らの目標は韓国機関の独立性を棄損する事により、地域覇権を狙う北京に抵抗する韓国の力を弱体化させる事だ。
中国は現在、各国の対中技術的依存を利用し海外で政治的影響力を強めている。北京がHuaweiを押し出し、5Gネットワークの構築を全世界の多くの国で強力に推進する理由はこのためだ。今やHuaweiと関連した多くのサイバースパイ活動事例が世界で報告されているが、西欧の戦略家らがより強く心配するのは紛争が発生した場合、北京がHuaweiの装備を利用し交通網と電力網、金融網はもちろん通信網まで全て遮断し、相手国を麻痺させる事だ。こうした状況は可能性に過ぎないが、武力衝突が切迫すればほぼ確実に起きるだろう。
韓国政府は5GネットワークにHuawei機器を使用する問題と関連し、中国と米国の「仲裁者」になりたいという意志を吐露しているが、危険な選択だ。韓国が北京の国際的ゲームに介入した瞬間、将棋の駒の「歩」の様に使い捨てられるのが明白なためだ。もし西欧がHuaweiを排除すれば、当然三星(サムスン)が最大の受益者となることも忘れてはならない。
また、韓国は歴史戦で中国を味方につけ中国の宣伝に巻き込まれないよう注意すべきだ。韓国は固有の歴史と文化を誇る国だ。しかし最近、中共が韓国の映画とTV産業に微妙な影響力を行使する状況が憂慮される。ハリウッドがそうである様に、北京は中国人投資家と巨大な中国市場を餌に韓国から伝えられる話を検閲し、中国に対する世界の認識を変えるために行うプロパガンダに合わせて歴史を歪曲する。
北京の無分別な嫌がらせと微妙な強圧に悩まされた韓国で最近、中国に向けた肯定的な情緒が現れている。豪州も同様であった。だが、豪州と韓国両国間には差異点がある。豪州政府は北京の嫌がらせに立ち向かったが、韓国の政治指導層は端から中国を恐れ、米国との間で「戦略的曖昧性」という軟弱な態度を維持した。もし、韓国政府が中国と緊密な関係を維持しつつ、韓国の独立も守れると思うのであれば、これは危険な賭けである。オバマ政権で中国政策の責任を担った著名な進歩主義者らは現在、初めて中共の真の本質と野望が何であるかに気付いた。韓国も目を開くべきだ。中国の真の本質と野望に気付かなければ韓国も危険である。だが現在、韓国政府には北京と通じながら民主主義と人権を擁護しようという意志を見出せない。