【読書亡羊】内閣支持率が各社で20%近くも違うワケ 鈴木督久『世論調査の真実』

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!


「数字の大小があることは自明」

「いや、それでも選択肢の作り方、あるいは質問文そのもので、調査結果、ひいては世論を誘導しようという作意があるのではないか?」

という声はあるかもしれない。これについて、鈴木氏は率直にこう述べている。

世論調査の結果を報道すると、各方面から時々批判されることがあります。「質問文が誘導的ではないか。それはマスコミの立場を利用した世論操作を意図した行為ではないか」という趣旨です。一定の意図をもって、特定の世論へと誘導するために質問文を作成することはないと信じますが、結果として誘導的な質問文となっていることがあります。

(賛否を問う法案などの)背景説明は必要になります。説明を増やすと前提を示すことができると同時に、誘導的になりがちです。しかし故意の誘導ではありません。バランスが重要です。

こう前置きしたうえで、実際に2021年1月に行われた、東京五輪開催の是非に関する各社の世論調査結果と、各社の質問文、選択肢を挙げたうえでの解説が続く。詳しくは本書をお読みいただきたいが、実に明快な「種明かし」が行われている。当然、質問文だけでなく、選択肢も結果に大きな影響をもたらす。

例えば、「支持する・わからない・支持しない」の三択の場合と、「支持する・やや支持する・どちらでもない・やや支持しない・支持しない」の五択の場合ではそれぞれの数値の出方は違ってくるし、「やや」を「支持する/しない」に加算すれば、双方の数字は大きく出る。

また、数値だけを見るのではなく、どの社でも共通する「下がったか・上がったか」という傾向をこそ見るべきだ、とも指摘する。

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