【読書亡羊】内閣支持率が各社で20%近くも違うワケ 鈴木督久『世論調査の真実』

【読書亡羊】内閣支持率が各社で20%近くも違うワケ 鈴木督久『世論調査の真実』

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!


各社の内閣支持率を比較する場合に、数値の大小があることは自明であり、そのことを騒ぎ立てて、マスコミの世論調査は信頼できないとか、意図的に操作しているなどと喧伝したところで、素人丸出しであって非生産的です。

耳の痛い指摘で反発したくもなるが、反論するならばそれなりの世論調査の手法や実態、統計の見方といった武器を携えないと、簡単に返り討ちにあってしまうだろう。

「固定電話のみ調査対象」のウソ

世論調査については、他にも「固定電話だけで、携帯電話に対して調査を行っていないのでは?」「日中に電話に出られる主婦や高齢者しか対象になっていないのでは?」といった疑念が投げかけられることもある。こうした疑問や俗説にも、本書はスパッと答えてくれている。

また、ネット上では、日々多くの「アンケート」が行われており、ツイッターなどでも誰もが手軽に「調査」めいたものを行えるようになった。新聞などのマスメディアによる調査と、ネット「調査」の結果の乖離を指摘し、「オールドメディアの調査は世論とかけ離れている」とする批判さえある。

だが、先に述べた質問文や選択肢による差はあれど、「学術的に説明のつく方法で行った世論調査」の客観性は、どれだけ母数が多くともネット「調査」とは比べ物にならないものであることが、本書を読むとこれでもかというほどよーくわかる。

むしろ、実際には存在しない世論調査のバイアスを批判する前に、「自分の願望に近い結果が出た『調査』結果を信じたがる」我が身にこそ、厳しい目を向けるべきだろう。

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