今回の新型コロナウイルスの蔓延を踏まえれば、「緊急事態条項」についても早急に議論をする必要があるのは明らかです。緊急事態宣言を発出しても強制性がなく、自粛を求めても補償がないなど、多くの不備を国民の皆さんも感じておられると思います。きちんとした補償制度を早急に構築していかなければなりません。また、個人の権利と公共の福祉のバランスをどうとるのか。テロや大地震など想定外のことが起きた時に、どういうルールに基づき対処するのか、憲法にも法律にも規定が一切ないのです。
さらに、いまや日本を取り巻く安全保障環境はより一層厳しさを増しています。台湾有事、尖閣防衛、沖縄をはじめ安全保障問題など、数年先の話ではなく喫緊の課題として取り組んでいかなければならない。もし中国の力による現状変更が行われた場合、それは緊急事態ではないのか。その時になって、「私権の制限が」などと言って国民の命を守れるのか。
いままで想定しえなかった課題に対しても、憲法でしっかりと定めていくべく憲法審査会で早急に議論していくことが非常に重要です。そうした定めのない国家などありません。
もちろん、「延々と議論ばかり重ねて一向に憲法改正ができないのではないか」という懸念があることも理解しています。何か有事が起きてからでは遅い。世論調査などを見ると、あの朝日新聞の調査ですら憲法改正賛成が多いので、「ここはもう早急に発議をして国民投票に委ねるべきではないか」という意見があることも存じ上げています。
仮にもし国民投票で否決されたらその政権は確実に吹っ飛びますが、菅政権には「政権をかけて憲法改正をする。全ての責任は自分がとる」ぐらいの気概をもって、憲法改正を訴えてもらいたいとも思います。
メディア報道の恐ろしさ
一方で、これまで立憲民主党の妨害などによって憲法審査会で議論すら行われなかった状況下、憲法改正に対する国民の理解が十分に及んでいるかという問題があります。
たとえば「憲法改正」に対する国民のイメージでは、いまもやはり「9条の改正」が圧倒的に多い。その他についてはほとんど認識を得られていません。我々の努力不足でもあり、憲法に対する国民の興味、関心がまだまだ低い。そして、なかには「9条改正」=「戦争」=「自分たちの子や孫などが戦場に送られる」とのアジテーゼが相当効いてしまっている。
平和安全法制の時を思い出して下さい。やれ戦争法案だ、アメリカの戦争に地球の裏側までついていく、などなど現在の立憲民主党の中核をなす民主党をはじめとする野党やメディアは連日連夜、大批判キャンペーンを展開しました。そうした批判の大半が嘘でしたが、全くお構いなしです。あれだけ批判を繰り返されたら、多くの国民が不安に陥ったとしても無理ありません。
恥ずかしい話ですが、うちの妻も「お父さん、平和安全法制が成立したら、うちの息子も戦争にかりだされるの?」と言っていたぐらいです。「そんなわけないやろ」と説明したのですが、メディア報道の恐ろしさを実感しました。
これが、いざ9条改正となればどうなるか。平和安全法制の比ではないでしょう。テレビなどでは朝から晩まで、なりふりかまわず延々と「戦争になる」の大合唱、朝日や毎日などの新聞も「9条改正大反対」で紙面が埋め尽くされるでしょう。
いま、中国の覇権的な行動によって国民にも国防や安全保障に対する関心が高まっていますが、現状ではまだまだアジテーションが勝ってしまう状況だと私は思っています。したがって、9条改正についてもやはり国民の理解を深める努力を国会議員がしていかなければなりません。
ただし、5年も10年も延々と議論だけを繰り返していくわけにはいきません。来年の通常国会、臨時国会でしっかりと議論を重ね、各党で大方合意できたものについては、国民投票にかけていくべきだと考えています。国民にとって身近な問題から、時代に合うよう変えていってもいいのではないか。