憲法論議をボイコット、繰り返される自作自演
国民投票法改正案は、大型商業施設への共通投票所の設置や水産高校の実習生に洋上投票を認めるなど7項目が盛り込まれており、いずれも一般の選挙ではすでに導入されている。国民投票の利便性を高めるものであって、本来なら異論をはさむ余地などないはずです。ところが、2018年6月に提出されてから9国会にわたって延々と審議が進まず、いたずらに時間だけが浪費されてきました。
立憲民主党は様々な難癖をつけては、憲法審査会での憲法論議をボイコットし続けてきた。安倍政権の時には「あれが悪い」 「誰がこんなことを言った」 「この法案が出ているからダメだ」など散々無茶苦茶な難癖をつけて、理由がなくなると最後はどうしたか。枝野代表は「安倍政権の間は憲法議論はしない」と言い出したのです。
小学生が朝、学校に行きたくない理由をいろいろと考えているのと一緒です。頭痛いとか、お腹痛いとか。「病院に行きなさい」と言えば、「いや病院に行くほどではない。でも痛いんや」と言ってみたり、理屈にもなっていない。
そして安倍政権から菅政権へと代わり、「議論をしない理由」がなくなったにもかかわらず、一向に議論すらしようとしてこなかった。小学生より酷い。
衆院憲法審査会野党筆頭幹事を務める立憲民主党の山花郁夫さんが各党から、「約束しましたやろ。議論すらせえへんって、一体どないなってんですか」と問い詰められるわけです。すると、追い込まれた山花さんは遂に何と言い出すか。 「いや、私ちゃうんですよ」 「じゃあ誰がそんな判断してるんですか?」 「いや国対(国会対策委員会)が」 「国対の誰ですか?」 「それは安住(淳)委員長が」
この繰り返しなんです。自民党の新藤義孝与党筆頭幹事が横で見ていて気の毒なぐらいに、あれを使ってこれを使って、粘り強く山花さんと交渉して、約束までとりつけて、山花さんは「絶対に約束を履行する」と言って、党に持って帰る。で、「アカン」と言われて帰ってくる。
「私はいいんですが国対がダメやと言うんです」
立憲民主党はこの自作自演を繰り返して、自民党にダメージを与える戦略なんです。毎年、毎国会これが延々と続く。職務怠慢と言わざるを得ません。
改憲に本気ではない自民党
そもそも憲法審査会という場は――私は初代憲法審査会会長を務められた中山太郎先生の弟子なのですが――政局とは関係なしに議論を進めるというルールがありました。その代わり、少数政党や少数会派も大政党と同じように扱う。これは中山方式と称され、衆議院では毎週木曜日に、参議院では毎週水曜日に審査会が開かれてきました。
ところが、いつの頃からか「政局とは関係なしに」というルールが一切無視され、憲法審査会が政局の道具、国会審議の取引材料に使われている。たとえば、今年のはじめには「憲法審査会開くんやったら、その予算を成立させへんぞ」などと立憲民主党は平気で言っていました。国会議員としてあるまじき姿です。
自民党も自民党で問題があります。私はよく有権者から「そんな酷い立憲民主党なんか放っておいて、自公と維新で進めればいいのではないか」と言われることがあるのですが、自民党もそういう時だけはなぜか「みんなで議論しなければ」と中山方式を持ち出すのです。
自民党本部の前に「憲法改正推進本部」と大書された看板が掲げられていますが、「その看板をおろしなさい」と言いたくなります。自民党にこそ、もっと改憲への本気度を示していただきたい。
細田博之衆院憲法審査会会長は各党に対して、「皆さん方、憲法改正項目あるんやったら党内でまとめて、いついつまでに出して下さい。ないところはないで結構です」と呼び掛けていただきたい。実はこのことは、大島理森衆議院議長にもお願いに行ったことがあるんです。議会としてきちんと審査会を動かすためには、各党に議長から投げかけて斡旋していただけないでしょうか、と。すると、大島議長は「うん、君はなかなかいいことを言うね」と仰ったものの、結局何も動きはありませんでした。
不思議なのは、憲法審査会が全く開かれていないことについて、テレビはもちろん、5大紙の読売も産経もほとんど批判しないことです。いったいなぜなのでしょうか。