“1勝1敗”の衆参補選と宮城県議選で明らかになったこと|和田政宗

“1勝1敗”の衆参補選と宮城県議選で明らかになったこと|和田政宗

10月22日に投開票された衆参補選、宮城県議選は、自民党にとって厳しい戦いとなったが、何とか踏みとどまったとも言える結果となった――。なぜか。その理由と今後の展望を徹底解説!(サムネイルは首相官邸HPより)


ギリギリ踏みとどまることができた理由

参院・徳島高知選挙区は、無所属で野党4党が支援する広田一氏が、自民新人の西内健氏に勝利した。参議院議員2期、衆議院議員1期を務め、抜群の知名度を誇る広田氏は、選挙戦に突入する前から優位に戦いを進めた。参院選において、合区前の高知選挙区で2回にわたって自民候補を破っており、国会においても経験豊富であることから保守層にも食い込んだ。

NHKによる投票日当日の出口調査によれば、自民支持層のうち34%が広田氏に投票した。なお、出口調査での政党支持率は、自民34%、立憲9%(野党4党の支持率を合わせても18%)と、遠く自民党に及ばないことから、広田氏という人物への投票につながったと言える。

自民党の西内健氏は、高知県議会議選で4期連続当選し、県連幹事長を務めており、実力派かつ政策通の候補であったが、高知・徳島への全地域的浸透は厳しかった。参院選挙は、全県域選挙と選挙区が広く、知名度と政策の浸透が大きなカギとなるが、結局差を詰めることができなかった。

一方、衆院長崎4区は、苦戦も伝えられたが、自民公認で新人の金子容三氏が立憲公認で前職の末次精一氏に勝利した。政治家家系として3代目であるが、40歳という若さと、優秀な証券マンであった経歴などから、期待を集めた。

「岸田内閣は負担増内閣」とのこれまでの批判に対し、岸田文雄総理が所得税減税を打ち出し、補正予算編成も控えていることから、ここ最近続いていた各種選挙での自民党への逆風は、「ひとまずどのような政策を打ち出すのか様子を見よう」という雰囲気になってきた。

後述する宮城県議選でも同様であり、これらがギリギリ踏みとどまることができたことに繋がったと考える。しかし、現在のこの状況も、しっかりとした減税や財政出動が打ち出せなければ失望に繋がり、自民党への大逆風となって、解散総選挙が行われたとしても厳しい結果となるであろう。

宮城県議選、聴衆の反応は悪くなかった

宮城県議選は、国政課題に直結する政策が主な争点にはならず、宮城県による4病院再編構想が争点となった。県立がんセンター病院、県立精神医療センターと、東北労災病院、仙台赤十字病院が対象となる構想であるが、構想を主導する村井嘉浩宮城県知事が、「私を止められるのは県議会だけだ」と述べたことから、県議選の争点化した。

立憲は「4病院再編反対」を掲げ10人全員が当選。仙台市内5選挙区のうち4選挙区でトップ当選した。自民は現職4人が落選したが、うち2人を破ったのはいずれも自民系の保守系無所属で、自民新人が新たに議席を獲得した選挙区が1つあるため、実質1議席減であった。

維新は4人を擁立し2人が当選、うち1人は元国民民主党系の元仙台市議会議員で、もう1人は42票差のぎりぎりの勝利であった。議席獲得はなったものの、これまでのような強い追い風ではなくなった。なお、参政党は1人を擁立したが、議席獲得はならなかった。

自民党への逆風は依然吹いていたが、仙台市議選の時のように「岸田政権は負担増内閣」「何かやるたびに増税だ」との声は、あまり聞かれなかった。これは、やはり岸田総理が、法人税減税や所得税減税を行う意向を示したことが大きいと考える。

「本当にやれるのか?」との批判はあったが、「まさに来週から党内で議論が行われる」「県議、国会議員が連携して減税を実現させたい」と演説すると、聴衆の反応は悪くなかった。国民は減税と補正予算の内容がどうなるのか注視している。

関連する投稿


進化する自衛隊隊舎 千僧駐屯地に行ってみた!|小笠原理恵

進化する自衛隊隊舎 千僧駐屯地に行ってみた!|小笠原理恵

かつての自衛隊員の隊舎といえば、和式トイレに扇風機、プライバシーに配慮がない部屋配置といった「昭和スタイル」の名残が色濃く残っていた。だが今、そのイメージは大きく変わろうとしている。兵庫県伊丹市にある千僧駐屯地(せんぞちゅうとんち)を取材した。


【編集長インタビュー】参政党への疑問を徹底的に問い糺す|神谷宗幣【2025年10月号】

【編集長インタビュー】参政党への疑問を徹底的に問い糺す|神谷宗幣【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『【編集長インタビュー】参政党への疑問を徹底的に問い糺す|神谷宗幣【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


変わりつつある自衛官の処遇改善 千僧駐屯地に行ってみた!|小笠原理恵

変わりつつある自衛官の処遇改善 千僧駐屯地に行ってみた!|小笠原理恵

自衛隊員の職務の性質上、身体的・精神的なストレスは非常に大きい。こうしたなかで、しっかりと休息できる環境が整っていなければ、有事や災害時に本来の力を発揮することは難しい。今回は変わりつつある現場を取材した。


終戦80年に思うこと「私は『南京事件』との呼称も使わない」|和田政宗

終戦80年に思うこと「私は『南京事件』との呼称も使わない」|和田政宗

戦後80年にあたり、自虐史観に基づいた“日本は加害者である”との番組や報道が各メディアでは繰り広げられている。東京裁判や“南京大虐殺”肯定派は、おびただしい数の南京市民が日本軍に虐殺されたと言う。しかし、南京戦において日本軍は意図的に住民を殺害したとの記述は公文書に存在しない――。


我、かく戦えり|神谷宗幣【2025年9月号】

我、かく戦えり|神谷宗幣【2025年9月号】

月刊Hanada2025年9月号に掲載の『我、かく戦えり|神谷宗幣【2025年9月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


最新の投稿


【独占手記】我、かく戦えり|杉田水脈【2025年10月号】

【独占手記】我、かく戦えり|杉田水脈【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『【独占手記】我、かく戦えり|杉田水脈【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【読書亡羊】ウクライナの奮闘が台湾を救う理由とは  謝長廷『台湾「駐日大使」秘話』(産経新聞出版)|梶原麻衣子

【読書亡羊】ウクライナの奮闘が台湾を救う理由とは 謝長廷『台湾「駐日大使」秘話』(産経新聞出版)|梶原麻衣子

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


TBS報道特集の「差別報道」|藤原かずえ【2025年10月号】

TBS報道特集の「差別報道」|藤原かずえ【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『TBS報道特集の「差別報道」|藤原かずえ【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


悲劇の空母「飛龍」の無念|上垣外憲一【2025年10月号】

悲劇の空母「飛龍」の無念|上垣外憲一【2025年10月号】

月刊Hanada2025年10月号に掲載の『悲劇の空母「飛龍」の無念|上垣外憲一【2025年10月号】』の内容をAIを使って要約・紹介。


【今週のサンモニ】「再エネ教」の信者の集会|藤原かずえ

【今週のサンモニ】「再エネ教」の信者の集会|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。