米に軍事貢献の約束、問われる日本の実行|田久保忠衛

米に軍事貢献の約束、問われる日本の実行|田久保忠衛

日米首脳会談の意義を表現すると、米国の対中政策の中で日本がより重要な役目を果たす約束をバイデン政権は取り付けたことにある。日本政府は「約束」だけでなく、「実行」の段階に移行する。菅義偉首相は大きな決断をした!


台湾有事の際に日本政府はいかなる行動に出るのか。有事の内容にもよるが、安全保障関連法の「重要影響事態」に当たるとして米軍の後方支援に徹するつもりか。米軍との共同行動に入る場合に、自衛隊は米軍と同じ作戦が可能かどうか。

心配なのは政治家と自衛隊の関係だ。1995年の阪神淡路大震災の際には革新首長が自衛隊の出動を要請しなかったかと思えば、災害時だけでなく、降雪による交通渋滞で自衛隊に飲料水を配らせるなど気軽に出動を要請する。吉田茂元首相は1961年の著書「世界と日本」で、「災害出動は自衛隊に任務の一つではあっても、それは決して自衛隊存在理由の本筋ではない」と既に警告している。政軍関係のすっきりしていない日本にとって、自衛隊を外国の軍隊と共に行動させるのは容易ならざる事と考えなければならない。(2021.04.19 国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)

田久保忠衛

https://hanada-plus.jp/articles/399

国家基本問題研究所副理事長。1933年千葉県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、時事通信社に入社。ハンブルグ特派員、那覇支局長、ワシントン支局長、外信部長などを務める。1992年から杏林大学で教鞭を執る。法学博士。杏林大学名誉教授。専門は国際政治。国家基本問題研究所副理事長。美しい日本の憲法をつくる国民の会共同代表。著書に『戦略家ニクソン』『激流世界を生きて』『憲法改正、最後のチャンスを逃すな!』など多数。

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