日米首脳会談についての各紙論調は出尽くした感があるが、一言でその意義を表現すると、米国の対中政策の中で日本がより重要な役目を果たす約束をバイデン政権は取り付けたことにある。日本政府は「約束」だけでなく、「実行」の段階に移行する。志ある政治家なら、この機会をとらえて日本を一人前の国家にする絶好の機会とすべきではないか。
共同声明の中に「日本は同盟及び地域の安全保障を一層強化するために自らの防衛力を強化することを決意した」「(日米両国は)在日米軍駐留経費負担に関する有意義な多年度の合意を妥結することを決意した」との表現がある。自国の防衛だから、その強化は別に不思議でないが、国際的な軍事貢献にアレルギーを示してきた日本としては思い切った意見を表明したと思う。
自民内にためらいも
日米二国間に限定した安全保障の議論として米民主党の中には、日本を軍事的に強くしてはいけないとのいわゆるウィーク・ジャパン派が存在していたが、軍事、政治、経済、先端技術、イデオロギーの全ての分野で米国の前に立ち塞がる中国に対して、日本をアジアで重要なプレーヤーに仕立て上げざるを得なかったと考えてよかろう。菅義偉首相は大きな決断をしたと評価していい。
問題はこれからの実行だ。中国が2月1日施行の海警法で「(中国の主権や管轄権の侵害に対して)武器の使用を含む一切の必要措置を取ることができる」と定めたことで、与党内に危機感が盛り上がった。ところが海上保安庁法改正によって対応すべしとの自民党国防部会案が海保を所管する国土交通部会の反対で通らず、「必要があれば法整備も検討する」という訳の分からぬ結論になった。
たまたま3月16日に東京で開かれた日米外務・防衛担当閣僚による安全保障委員会(2プラス2)が尖閣防衛に安保条約第5条を適用することを確認し、これが日米首脳会談のたたき台になることは推定できた。これで尖閣の危機は去ったと思い込んでしまったのだろうか。国土交通部会には相も変わらず中国を挑発することへの懸念が存在していたようだ。