裏の顔
勧告や答申の回数以上に問題なのは、学術会議が裏の顔を持っているということだ。先に指摘したとおり、日本の防衛技術に関する非協力的な態度である。むしろ、この分野については、日本政府が進める安全保障政策に対して敵対的だ。どこの国の代弁をし、どこの国のシンクタンクなのかとすら思えてくる。
民間組織として防衛技術に協力したくないのであれば、そう宣言するのも勝手だが、学術会議の会員は特別職の国家公務員である。支給される手当が十分ではないとの不平も聞かれるが、まがりなりにも公金で運営されている。国民の生命と安全を軽んじる姿勢は許されない。
もともと、さきの大戦で軍部への協力を余儀なくされたという反省から設立された経緯があり、軍事的な研究にアレルギー反応を示すのは分からないでもない。
だが、戦後75年経ち、日本の周囲を見渡せば中国やロシア、北朝鮮といった独裁的、権威主義的なゴロツキ国家に囲まれ、隣には慰安婦像を使い、世界中で日本を貶める活動に嬉々として勤しむ団体の背中を後押しする病んだ政権がある。変えるべきは変え、改善すべきは改善するのが当たり前だ。成長した子どもに、いつまでも同じ服を着せようという考え方こそ間違っている。
学術会議のセンセイ方が知らないはずがない事実
だいたい、軍事と民生用の研究は表裏一体であり、線引きは不可能な分野が少なくない。
研究者や学者が、軍事研究を意図しなくても、結果として研究成果が軍事転用されるのは、生物・化学兵器などをみるまでもなく明らかである。いまでは多くの人がコミュニケーションの手段として利用する電子メールやツイッターなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)も、もともと米軍が軍事目的で研究し、開発した。
その事実を学術会議のセンセイ方が知らないはずがなかろう。戦争を好む者などいない。戦争が起きないよう、抑止力としての軍事技術を磨き、防衛力を整備することが肝要であることは論を俟たない。
学術会議は1950年、「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わない決意の表明」と題する声明を出した。67年にも同様の声明を出し、2017年3月にはわざわざ「軍事的安全保障研究に関する声明」で、過去2回にわたり発出したさきの声明を「継承する」と宣言した。
中国科学技術協会と技術協力を目的とした覚書を締結した1年半後のことである。