異様だった中国外相の記者会見|矢板明夫

異様だった中国外相の記者会見|矢板明夫

王毅・国務委員兼外相が全人代の記者会見で習近平国家主席に公然と忠誠心を誓う光景は異様に感じられた。王毅氏の発言は、これからの中国の外交がますます強硬になる可能性を示唆したともいえる。


習氏は来年の党大会で、3期目への続投を目指しているが、それに反対する李氏は昨年夏以降、習氏を暗に批判する発言を繰り返すようになり、双方の関係が悪化している。外交政策では、対米強硬路線を主張する習氏と、国際社会との協調を重視する李氏の間で大きな違いがあるとされる。王氏の全人代の記者会見での発言は、これからの中国の外交がますます強硬になる可能性を示唆したともいえる。

王氏は会見で、日本政府が懸念を示した海警法について「特定の国を念頭に置いたものではなく、国際法と国際的な実践に完全に合致している」と述べた。鵜呑みにしてはならない。昨年に施行された香港国家安全維持法が今年になってから民主派弾圧の根拠となったように、中国がこれから尖閣諸島(沖縄県石垣市)海域で海警法に基づく法執行を実行に移すことを日本は警戒すべきだ。(2021.03.15 国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)

矢板明夫

https://hanada-plus.jp/articles/349

産経新聞台北支局長。1972年、中国・天津市生まれ。15歳の時に残留孤児2世として日本に引き揚げ。97年、慶應義塾大学文学部卒業。同年、松下政経塾に入塾(第18期)、アジア外交が研究テーマ。その後、中国社会科学院日本研究所特別研究員、南開大学非常勤講師を歴任。2002年、中国社会科学院大学院博士課程修了後、産経新聞社に入社。さいたま総局記者などを経て、07年から中国総局記者。20年から現職。著書に『習近平なぜ暴走するのか』(文春文庫)。最新刊は『中国人民解放軍2050年の野望』(ワニブックスPLUS新書)。

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