異様だった中国外相の記者会見|矢板明夫

異様だった中国外相の記者会見|矢板明夫

王毅・国務委員兼外相が全人代の記者会見で習近平国家主席に公然と忠誠心を誓う光景は異様に感じられた。王毅氏の発言は、これからの中国の外交がますます強硬になる可能性を示唆したともいえる。


Getty logo

3月11日に閉幕した中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、香港の選挙制度の見直しに関する決定案を採択したことが注目された。香港の民主派を議会から排除することは昨年来の既定方針であり、全人代を10年以上取材してきた筆者にとって、特に驚きはなかった。しかし、王毅・国務委員兼外相が記者会見で習近平国家主席に公然と忠誠心を誓う光景は異様に感じられた。5年に一度の党大会を来年秋に控え、共産党内の権力闘争が白熱化したことを象徴しているようだ。

習主席の指導を称賛

中国の外相が全人代期間中、記者会見をすることは毎年の恒例だ。王氏にとって8度目となった今年の会見は、中国外交の現状と政策などについて従来の説明と主張を繰り返した。特に新味はなかったが、共産党の機関紙、人民日報の記者とのやり取りは例年にない内容だった。

「党による外交への指導の深い意味をどのように理解すべきか」との質問に対し、王氏は「中国外交の重要な政策と成果は、党中央が全局を統括して計画した賜物だ」と強調した上で、「習近平総書記はグローバルな視野や戦略的不動心、責任感で、外交の理論と実践を革新し、外交発展の青写真を描き、中国を終始、正しい方向へ導いてきた」と露骨に習氏を持ち上げた。

記者の質問は、外務省側が事前に用意した「やらせ」であることは言うまでもない。一党独裁体制の中国で、外交だけではなく、金融も財政も教育も安全保障もすべて事実上共産党が主導していることは周知の事実であり、記者会見でわざわざ強調することではない。

中国の憲法の規定では、国家権力の最高執行機関は国務院(政府)である。そのトップは李克強首相だ。王氏は自身の直接の上司である李氏のことを完全に無視して、習氏だけを称賛した。自身が習派であることをアピールする狙いがあるとみられる。

警戒すべき尖閣海域での法執行

関連する投稿


中国のハイブリッド戦に備えよ|太田文雄

中国のハイブリッド戦に備えよ|太田文雄

ペロシ米下院議長の訪台(8月2~3日)に伴い、台湾を威嚇する中国の軍事演習が実施されたが、中国が同時に行った非軍事面での「攻撃」にも注目すべきだ。サイバー攻撃には、日本政府が基本原則とする「専守防衛」で対応できない。


もはや米海軍だけで抑止は効かない|織田邦男

もはや米海軍だけで抑止は効かない|織田邦男

台湾有事は日本有事である。もはや米海軍だけでは抑止は効かなくなった。日本は防衛力強化を急がねばならない。日本のEEZにミサイルを撃ち込まれても、国家安全保障会議(NSC)が開かないという感度の鈍さでは、取り返しがつかなくなる。


台湾を守らなければ、我が国は守れない!|和田政宗

台湾を守らなければ、我が国は守れない!|和田政宗

8月4日、中国は日本の排他的経済水域内を狙って弾道ミサイルを撃った。史上初のことであり、極めて挑発的だ。ステージは変わった! 平和を叫べば平和は守られるという「平和ボケ」を捨て、あらゆる手段をもって国家国民を守らなくてはならない厳しい状況であることを認識すべきだ。


台湾海峡危機への抑止力を高めよ|岩田清文

台湾海峡危機への抑止力を高めよ|岩田清文

問題はペロシ訪台だけではない。訪台があるなしに拘わらず、既に台湾海峡危機は、制御できない限界点に向かって時間が経過している。


憲法改正を必ず成し遂げる|高市早苗

憲法改正を必ず成し遂げる|高市早苗

現代と次代に生きる国民の生命、領土、国家の主権と名誉を守り抜ける憲法の制定は急務だ。遺のこされた同志議員の力を結集して、必ず成し遂げる。


最新の投稿


中国のハイブリッド戦に備えよ|太田文雄

中国のハイブリッド戦に備えよ|太田文雄

ペロシ米下院議長の訪台(8月2~3日)に伴い、台湾を威嚇する中国の軍事演習が実施されたが、中国が同時に行った非軍事面での「攻撃」にも注目すべきだ。サイバー攻撃には、日本政府が基本原則とする「専守防衛」で対応できない。


もはや米海軍だけで抑止は効かない|織田邦男

もはや米海軍だけで抑止は効かない|織田邦男

台湾有事は日本有事である。もはや米海軍だけでは抑止は効かなくなった。日本は防衛力強化を急がねばならない。日本のEEZにミサイルを撃ち込まれても、国家安全保障会議(NSC)が開かないという感度の鈍さでは、取り返しがつかなくなる。


台湾を守らなければ、我が国は守れない!|和田政宗

台湾を守らなければ、我が国は守れない!|和田政宗

8月4日、中国は日本の排他的経済水域内を狙って弾道ミサイルを撃った。史上初のことであり、極めて挑発的だ。ステージは変わった! 平和を叫べば平和は守られるという「平和ボケ」を捨て、あらゆる手段をもって国家国民を守らなくてはならない厳しい状況であることを認識すべきだ。


【読者投稿「安倍総理への感謝の手紙」大募集!】

【読者投稿「安倍総理への感謝の手紙」大募集!】

本誌9月号『安倍晋三元総理追悼大特集号』、セレクション『ありがとう そしてサヨナラ 安倍晋三元総理』をお読みになったご感想、ならびに「安倍総理への感謝の手紙」をお寄せください。


台湾海峡危機への抑止力を高めよ|岩田清文

台湾海峡危機への抑止力を高めよ|岩田清文

問題はペロシ訪台だけではない。訪台があるなしに拘わらず、既に台湾海峡危機は、制御できない限界点に向かって時間が経過している。