中国・武漢で発生した新型コロナウイルス禍を機に、日本政府は生産拠点の国内回帰や多元化を図るのを目的に、「脱中国」を促すための補助金事業に乗り出した。
経済産業省は2020年7月17日、令和2年度第1次補正予算に「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」を計上し、57件の事業を採択した。政府は新型コロナウイルスによる緊急経済対策の一環として、計2435億円を二年度予算に盛り込んだ。
選ばれたのはシャープなどの大企業以外、大半が中小企業で、不織布マスクの製造など医薬品や医療機器などの衛生用品関連が目立つ。
日本側の動きについて、中国共産党機関紙「人民日報」のニュースサイト「人民網日本語版」(2020年9月18日付電子版)は「日系企業1700社が『中国撤退待ち』の真相は?」と題したレポートで、日本で進む「脱中国」政策を次のように批判している。
「経産省に補助金申請した日系企業1700社は、在中国日系企業約35000社の5%にも満たない。対中投資は減少どころか増加しており、感染症(新型コロナウイルス)のなかでも、ホンダとトヨタの中国販売量は過去最高を更新し続けている。日本政府が中国とデカップリング(切り離し)するという軽率な選択をすることはないだろう」
党機関紙らしい物言いだ。上から目線で日本政府に対し、「日系企業に儲けさせてやっているんだから、馬鹿な判断したら、彼らがどうなっても知らないよ」と聞こえる。
政情不安など、チャイナリスクは強まることはあっても弱まることはないのだ。日本企業には「撤退」の勇気も求められる。(初出:月刊『Hanada』2021年2月号)
産経新聞論説副委員長。1964年、東京都生まれ。早稲田大学卒業。産経新聞・元ワシントン支局長。大学卒業後、産経新聞に入社。事件記者として、警視庁で企業犯罪、官庁汚職、組織暴力などの事件を担当。その後、政治記者となり、首相官邸、自民党、野党、外務省の各記者クラブでのキャップ(責任者)を経て、政治部次長に。この間、米紙「USA TODAY」の国際部に出向。2010年、ワシントン支局長に就任。論説委員、九州総局長兼山口支局長を経て、論説副委員長。主な著書に『日本復喝!』『日本が消える日』『静かなる日本侵略』(いずれもハート出版)などがある。