どの色に染まるか分からないカメレオンぶり
ハリスのカメレオン的な「体色変化」の具体例を見ておこう。 極左のジャンヌ・ダルク、アレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員(以下、略称のAOCを用いる。1989年生)を旗頭に民主党内の左派は、反炭素原理主義の立場から、シェールガス、シェールオイルの採掘に関しフラッキング(水圧破砕)を禁止するよう求めてきた。
石油、天然ガス等、化石燃料を利用すること自体に反対であるうえ、採掘過程で地下水汚染、大気汚染を引き起こし、周辺に深刻な健康被害をもたらしかねないとの理由からである。
ハリスは当初、この極左の意見に同調し、フラッキングは禁止せよとの立場を取った。しかし民主党員にも、石油、天然ガス関連の仕事で生計を立てている者は多い。特に2020年大統領選の激戦州テキサス、ペンシルベニア等においてそうである。選挙戦が進むにつれてハリスは、立場を急旋回させ、フラッキング禁止に反対と明言するに至った。ハリスほど揺れが大きくないにせよ、バイデンも同様であった。
しかし、不満をあらわにする極左をなだめるため、政権発足後には環境規制を強化して、実質的にフラッキングを難しくするといった方針も示唆し、結局、どの色に染まるか分からないカメレオンぶりは、バイデン、ハリスとも維持している。
周庭に言及ナシ、中国の人権蹂躙には無関心
ハリスにおける最大の懸念材料は、その対中姿勢である。
2020年12月2日、中国共産党(以下、中共)の影響下にある香港の裁判所が、「違法集会煽動」などの罪で、数名の民主活動家に実刑判決を下した。そのなかには、若い女性闘士の周庭も含まれている(禁錮10カ月)。当然、弱者の人権の守護神をもって任じ、女性でアジア系(母方)である旨も強調してきたカマラ・ハリスから、周庭を励まし、中共を厳しく非難するコメントが出るはずと期待したが(というとになるが)、案の定、何の批判的発信も見られなかった。見事にゼロである。
日本のメディアでは、「アメリカでは民主党のほうが人権に厳しい」とのコメントがよく載る。しかしこれもまた、米主流メディアを受け売りしたフェイク(偽)ニュースに過ぎない。 「警察の人種偏見」やLGBT差別など国内の人権問題は歪曲まじりに追及するが、中国の人権蹂躙には関心を示さないタイプが、むしろ民主党のほうに多い。ハリスはその典型と言える。 「自由の闘士」(freedom fighters)への共感と支援を常に掲げたロナルド・レーガン大統領の衣鉢を継ぎ、各種の対中制裁法案を主導してきたマルコ・ルビオ、テッド・クルーズ両上院議員などを擁する共和党のほうが、はるかに中共の人権蹂躙糾弾で一貫した姿勢を取っている。
ちなみに2020年8月、トランプ政権が香港の林鄭月娥行政長官らに制裁を科したことに対抗して、中国側が「香港問題で言語道断な振る舞いをした」6人の米議員を制裁対象にすると発表したが、上述のルビオ、クルーズはじめ全員が共和党所属だった。