世界で最も警戒すべき左翼カマラ・ハリス
「人事は政策」という言葉が英語にもある(Personnel is policy)。そして人事の要諦は、言うまでもなく、適材適所である。
選挙目当ての多様性アピールや党内融和を優先し、能力や適性と離れて、女性を何割、黒人やヒスパニックを何割、極左を何割といった感覚で人事を行うことは許されない。
2021年1月20日の就任時点で78歳と、大統領として歴代最高齢となるうえ、過去に頭部動脈瘤切除の大手術を二度受けているジョー・バイデンの場合、健康不安が常に付きまとう。不幸にして職務不能に陥ったとき、あとを襲うことになる副大統領候補に誰を据えるかは、とりわけ責任感が問われる人事であった。この重大なテストに、バイデンははっきり落第した。
初めから女性に絞ると宣言して米国民の半数を性を理由に排斥し、女性で黒人とインド系のハーフ、一見クールなルックスを備えたカマラ・ハリス(一九六四年生)を、ほぼそうした外面的理由からのみ選んだからである。民主党の大統領候補たちが壇上に並んだ第1回テレビ討論会で、不意打ち的にバイデンを人種差別主義者呼ばわりし、挙句に論理破綻に陥って自滅した野心家のハリスに、誰よりも不信感と侮蔑感を抱いているのはバイデン周辺だろう(その経緯の詳細については拙著『3年後に世界が中国を破滅させる』ビジネス社刊、参照)。
以下、いつ「自由世界のリーダー」になるか分からないという意味で、世界で最も警戒すべき左翼、ハリスに関して、まず問題点を整理してみたい。
掌を返した民主党支持の主流メディア
議会での投票記録から「最も左翼的な上院議員」に位置づけられるハリスだが、「カメレオン左翼」と揶揄されるように、状況に応じて「体色変化」させる無定見ぶりから、保守派は言うまでもなく、極左からも中道リベラルからも「信頼できる同志」とは認められていない。
2019年半ばに大統領選出馬を表明し、選対本部を立ち上げて運動を始めたが、環境問題や人種問題など左派が重視するテーマでハリスの立場が揺れ動くため、「これほど混乱した組織は見たことがない」との捨て台詞とともに選対本部長が辞任するなど、陣営は空中分解に陥った。
民主党内の支持率も急落して、3%程度と低迷し、結局、2020年1月の予備選開始を待たずして、選挙戦からの撤退を余儀なくされた。
当時は、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなど民主党支持の主流メディアも、「ハリスは言動に一貫性がなく統率力を欠く」と厳しい評価を下していた。
ところが、2020年夏にバイデンがハリスを副大統領候補に指名した途端、両紙とも、掌を返したようにハリス=信頼できる政治家論に転じた。「カメレオン左翼」は何もハリスの専売特許ではない。
米主流メディアは今後とも、民主党政権の副大統領にして次期大統領の有力候補、ハリスを持ち上げ続けるだろう。スキャンダルめいた情報は、バイデンと息子ハンターの「職権乱用、私腹肥やし」疑惑同様、黙って握りつぶすはずだ。したがって主流メディアに依拠する限り、ハリスの実像はつかめない。