バイデン大統領で日本は最悪事態も|島田洋一

バイデン大統領で日本は最悪事態も|島田洋一

「ジョーは過去40年間、ほとんどあらゆる主要な外交安保政策について判断を誤ってきた」オバマ政権で同僚だったロバート・ゲイツ元国防長官は回顧録にこう記している。バイデンの発言のあとに、そのとおりの行動が続くと考えてはならない。土壇場で梯子を外された場合を想定して、その収拾策も用意しておく必要がある。


疎かになる中共関連捜査

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では、バイデン政権が誕生した場合、トランプ政権同様の「中国シフト」を維持できるだろうか。まず、いま見たハーバード大学の看板教授逮捕のような件は、バイデン政権ならまず起こり得ない。  本稿冒頭にレーガンの日記を引いたが、そのなかにバイデンの演説場所としてハーバード大学ケネディ・スクールの文字があった。当時、大統領選に初挑戦していたバイデンにとって、ここでの講演は権威付けのため非常に重要であった。  

ハーバードは民主党エリートの養成校と言うべく、教授陣もリベラル派で固めた、まさにリベラルの聖地である。オバマ大統領も、ハーバード大学法科大学院の出身だった。  

したがって、オバマやバイデンが率いる政権が、自陣営の聖地たるハーバードの権威を落とすような捜査を優先事案とするようFBIに命じることはあり得ない。一方、トランプの場合は全く逆に、「ハーバードか。徹底的にやれ!」ということになるだろう。  

バイデン政権で懸念されるのは、トランプ時代に軌道に乗ったFBI捜査の「中国シフト」を解除し、捜査資源を、人種偏見に侵された(と民主党が主張する)警察組織や反同性愛的な宗教団体、「環境破壊に邁進する」石油関連企業などに傾斜注入しかねないことだ。当然、中共関連の捜査は疎かになる。  

他国の捜査方針の話だけに、日本政府にできることは少ないが、FBIや司法省が「中国シフト」を維持するよう様々な機会に米側に意見具申すべきだろう。もっともそのためには、日本自身がしっかり「中国シフト」を敷く必要がある。

警戒すべき温暖化問題

バイデン、ハリスを筆頭に、米民主党においては、地球温暖化こそが人類にとっての最大脅威と主張する者が多い。その文脈で、二酸化炭素(CO2)の排出削減などの取り組みに当たって、中共は緊密に協議し、合意を形成すべき「パートナー」だと位置付けられる。これも日本として警戒を要する部分である。  

中共側は、温暖化問題での協力というバイデン政権の提案に応じるに当たり、様々な条件を付けてくるだろう。  

たとえば、米側が台湾にミサイル、戦闘機などの武器売却を進めるようでは協議の席に着けない。懲罰関税を撤廃しないようでは協議の席に着けない。ウイグル、チベット、香港の人権問題に関して制裁を強めるようでは協議の席に着けない、等々である。  

トランプ政権は、「アメリカはテクノロジー開発によってエネルギーの効率利用を進め、CO2排出量を減らしている。それ以上の無理な削減を米企業に強いるべきではなく、他国と協議すべき事項もない」との立場を取ってきた。  

それゆえ、協議の場を作るため、相手の意向に配慮した「環境づくり」が必要といった発想もなかった。だから、台湾への武器売却も遠慮なく進めたし、対中懲罰関税も立て続けに発動した。  

一方、バイデン政権は「協議の場」設定ありきで様々な対中譲歩をしかねない。またバイデンの場合、外交を基本的に国務省の官僚機構に委ねる可能性が強い。国務省は組織の体質として、交渉のための交渉に走りがちで(そのことで予算も付くし、注目度も高まる)、相手から「協議を打ち切る」と言われると反射的に譲歩を考える傾向がある。

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