中国共産党は全ての自由を否定している/『見えない手』前書き

中国共産党は全ての自由を否定している/『見えない手』前書き

6万部突破のベストセラー『目に見えぬ侵略』の第二弾『『見えない手 中国共産党は世界をどう作り変えるか』がついに発売! アメリカ、イギリス、EU各国での中国の影響力工作を実名で暴露。さらに日本についても特別加筆もある必読の書です。こちらでは原著前書きを公開!


本書のテーマは、中国共産党が北米と西欧(つまり西洋諸国)において、影響力の発揮、干渉、そして破壊などを、何を対象にして、なぜ、そしてどのようにして行ったかについてだ。オーストラリア(『目に見えぬ侵略』で詳述)とニュージーランドにおける中国共産党の活動については、ごくたまに触れる程度である。

ただし中国共産党の活動は、全世界の秩序の再構築を目指しており、その形は様々であるが、今回紹介する西洋諸国の経験は、世界のあらゆる国々が経験したこととよく似ているのを心に留めておくべきだ。

サモアからエクアドル、モルディブからボツワナまで、このような広い範囲で標的(ターゲット)にされていない国を見つけ出すことの方が難しい。南半球における中国共産党の影響力については詳細な研究と暴露が急務であるが、本書では扱っていない。

中国共産党は、中国の国内外の人々に対して「中国共産党はすべての中国人の代弁者だ」と確信させるために必死に努力している。中国共産党は、中国のすべてを統治する存在として見られることを望んでおり、中国人がどこにいようと、国を愛するということは、党を愛するということであり、党を愛する者だけが真に国を愛していると主張している。

そして党こそが人民であり、党を批判することは中国の国民への攻撃と同じことである、と主張しているのだ。

西洋諸国はこの計略にまんまとかかってしまい、中国共産党の政策を批判している人たちを「人種差別主義者」(レイシスト)や「中国恐怖症」(サイノ・フォビック)と呼ぶ人たちが非常に多いのが困ったものだ。

そうすることで、彼らは中国人を擁護するのではなく、中国共産党に反対する中国人や、中国共産党によって迫害されている少数民族の声を、黙らせたり疎外したりしていることになる。最悪の場合、彼らは中国共産党の工作要員となってしまう。

そこで本書では、中国共産党と中国人との間を明確に分けている。「中国」という言葉を使うときは、中国共産党に支配されている政治的主体を示す略語として使う。これは「カナダ」が国連の決議に賛成した、という場合と同じだ。

目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画

中国と西洋諸国との争いは「文明の衝突」ではない

「党」「国家」そして「人民」を混同することは、あらゆる誤解を招くことになるのだが、まさにそれこそが中国共産党の望んでいることだ。

その結果の一つが、ごく一部ではあるが華僑社会が敵視されるようになったことだ。ところが後ほど見ていくように、実際には多くの華僑こそが中国共産党の最大の犠牲者となっている。彼らは中国共産党の海外における活動について最もよく知っており、中にはこの問題を解決したいと望んでいる者もいるのだ。

「党」と「人民」を区別することは、中国と西洋諸国の間の争いが「文明の衝突」ではないことを理解するためにも不可欠である。私たちが直面しているのは儒教的な「他者」ではなく、莫大な経済的、技術的、軍事的資源に支えられた、専制的な政権であり、中央委員会、政治局、そして総書記を備えたレーニン主義の政党なのだ。

本物の衝突は、中国共産党の抑圧的な価値観やその慣習と、国連の「世界人権宣言」に謳(うた)われている自由との間でぶつかっている。その自由とは、言論・集会・宗教・信仰の自由、迫害からの自由、個人のプライバシーの権利と、法の下での保護の平等である。

中国共産党はこれらのすべてを、言葉でも、その行為でも否定している。

中国の周辺国に住んでいる人々は、このようなことを西洋諸国のほとんどの人よりもよく理解している。だからこそ最近の香港の抗議行動が起こり、2020年1月に台湾の蔡英文総統が再選されることになった。台湾の人々は投票箱を使って、地滑り的な数の票によって中国共産党にノーと言ったのだ。

左派の人々の中には、歴史的に抑圧された者を擁護してきたにもかかわらず、習近平政権の中国政府の本質から目をそらそうとしている。彼らは全体主義がいかに人権を蹂躙(じゅうりん)するものなのかを忘れている。

それでも中国共産党の活動に対する不安は政治的な党派の違いを越えており、特にアメリカの連邦議会の中では、民主党と共和党が北京に対抗するために同盟関係を結んでいる。これはヨーロッパでも同様だ。

左右両派の中にはいくつかの相違はあるものの、中国共産党政権下の中国が人権の面だけではなく、国家の主権に関しても重大な脅威であることについて、意見が一致しているのだ。

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