5月29日のNITEの「効果が確認されていない」という発表で、全国一斉に次亜塩素酸水の噴霧器が撤去された。その後、我が国の新型コロナウイルス感染者はじわじわと増え続け、空気が乾燥した年末に至って、病床が逼迫するほどの増加を見せている。
米国では、環境保護庁(EPA)が次亜塩素酸水をコロナ対策推奨消毒剤として登録し、歯科や口腔外科でも手術後の消毒に使用している。米国船級協会(ABS)も船舶の次亜塩素酸水による消毒を奨励している。
中国でも国家衛生健康委員会が、室内空気の消毒、手・皮膚・粘膜の消毒などに次亜塩素酸水が向いていると使用指針に明記している。2017年出版の「医院消毒技術規範」には、次亜塩素酸水は手術器具や傷口にも使用され、空間除菌では濃度100ppmのものを噴霧していると記載されている。
政治が理学と工学の力を活用して初めて科学技術立国となり、感染防止と経済活動復活の両立が可能となるのだ。( 2020.12.21 国家基本問題研究所「今週の直言」より転載)
著者略歴
国基研理事、東京工業大特任教授。1952年、東京都生まれ。東京工業大理工学研究科原子核工学修士課程修了。専門は原子炉工学。東芝に入社し原子力の安全性に関する研究に従事。同社電力・産業システム技術開発センター主幹などを務め、2007年に北海道大大学院教授に就任。同大大学院名誉教授・特任教授を経て現職。