香港の民主化運動リーダーが次々逮捕され、実刑判決を受けている。これに対して日本で批判の声が高まり、朝日新聞までもが12月3日社説で「国際社会は共同行動を強めるべきだ」と書いた。
それでは国際社会はどのような共同行動を取るべきなのか。都合が悪くなれば国際的な約束や評判など無視する独裁政権に人権侵害をやめさせるためには、それをやめないと大きな打撃になるという枠組みを作るしかない。朝日が言及した「国際社会」の人権侵害に対する取り組みには構造的欠陥があるため、すさまじい人権侵害を犯している中国に国際的な制裁が科されていない。その欠陥を見過ごし、むしろ助長してきたのが朝日をはじめとする日本の「人権派」だ。
国連人権機関の構造的欠陥
現在、国際社会を代表するのが国連だ。国連は発足以来、世界人権宣言、国際人権規約などを根拠に人権問題に取り組み、2006年には、それまでの人権委員会に代わる機関として人権理事会を設置した。人権理事会は47カ国が任期3年・再選可能の理事となるが、理事国がそれぞれ自国内に人権問題を抱えているため、理事国の人権問題はけん制し合って扱われない傾向がある。
国連の人権問題の取り組みでは、政府が国民に対して人権侵害を行うことが多いという前提に立って、NGO(非政府組織)や個人が自国政府の人権侵害を直接告発できる仕組みが発達している。その結果、言論と政治活動の自由が保障されている日米欧などでは、「人権派」が自国の人権侵害をことさらに強調する活動をしている。朝日はその片棒を担いできた。
一方、中国や北朝鮮のような全体主義国家ではそもそもNGOの自由な活動が許されないので、国内のすさまじい人権侵害が国連に持ち込まれることは少ない。亡命者らによって持ち込まれても、国が閉ざされているため実態把握が困難だ。その結果、国連では中国などに比べて顕著に人権が保障されている米国や日本などの人権侵害を取り上げるという偏向を犯してきた。
その上、人権理事会は人権侵害国に対する制裁発動などの強制力を持たず、勧告などを出すだけだ。強制力を持つのは安保理だが、中国が常任理事国として拒否権という特権を持つため、中国の人権侵害は制裁の対象にならないまま放置されている。